完璧で究極のアイドルがGI九冠バに転生しました 作:雑穀ライス
その姿を見るとどこか懐かしさと胸の苦しみを覚える鹿毛の少女におっぱいを蹂躙された後、僕は彼女が走る姿を呆けたように観戦していた。
なんだかよくわからないままレースが始まって、なんだかよくわからないままレースが終わった。妹を誘拐した芦毛のウマ娘が突然ゴール前で休憩したり、レースに途中参加した子がそのウマ娘を蹴っ飛ばして先頭でゴールしたりと色々と理解不能なレース内容だった。
レースが終わった後、妹を誘拐したウマ娘は警察帽をかぶったウマ娘に腰縄を掛けられて犬の散歩のような格好で連行されていった。そしてその後に連行されていったウマ娘とは別の小さな芦毛のウマ娘が鹿毛の少女にウレタン製のバットでお尻を叩かれていた。
多分これはレースのふりをしたコントだったのだろう。僕はそう解釈してこれ以上考えるのをやめた。
「ヒカル……」
妹の誘拐事件騒動は終結し、そして今ぼくは件の少女…アーモンドアイと対峙している。
「…あの、僕に何か用かな?」
浮ついている感情を無理やり抑え込んで平静を装って返事をしたのだが、どうも少し冷たい口調になってしまったようだ。
どうしよう、彼女に怒っていると思われないだろうか?そんなつもりじゃないのに。
「あ……あの、その、ごめんね!!」
開口一番、彼女は僕に謝った。
ああ、やっぱり。失敗したなぁ。
「ああ、うん。気にしてないから」
自慢にもならないが、僕はクラスメイトからおっぱいを揉まれ慣れている。いきなり
僕はアイの謝罪を受け入れて彼女のセクハラを水に流そうとしたが、当の彼女は「そうじゃなくてー、そうじゃなくてー」といった感じの煮え切らない態度を見せている。
…僕にどうして欲しいんだ。君は。
「あの…その……じゃあ、私のおっぱい、揉む?」
「君が何を言ってるのかよくわからない」
話の脈絡が異世界転移して急にアイが自分のおっぱいを持ち上げて僕の前に差し出してきたので頭の中が一瞬パニック状態になってしまった。狼狽して取り乱さなかった自分を褒めてやりたいぐらいだ。
彼女の手の中で柔らかそうにたわむおっぱいが艶めかしい…いやいや、何を考えているんだ僕は。
「…うん、うん。気持ちだけ受け取っておくよ」
理性を総動員して僕はアイの提案を断る。このときの僕の表情は完全に引き攣っていたと思うが、鼻の下を伸ばした顔を彼女に見せるよりはマシだと自分に言い聞かせてなんとか割り切った。…なんでぼくは他人のおっぱいに執着してるんだろう。
これだけ言葉を交わしても、僕には彼女が何を考えてるのか、何を伝えたいのかがまったく分からない。
彼女との会話にストレスを感じているわけではないけど、自分の中に渦巻くこの感情をどう表現していいのか分からなくてもどかしい。じれったい。
そんな言いようのないモヤモヤした感情を、
「ヒカル…『愛してる』よ」
たった一言で、アイは吹き飛ばしてくれた。
「『私は貴方を愛せない』なんて言って、ごめん」
胸が痛い。
目の奥が熱い。
喉が渇いて、指先が痺れるほどに強張っている。
その記憶を、その感情を。
僕は知らない。知る由もない。
それなのに、僕の魂が激しく反応する。
胸の奥が燃え上がるように熱くなってくる。
この感情は、喜びだ。
「やっと言えた。遅くなって、ごめんね」
アイのその言葉が、溶けるように僕の胸の中に染み渡っていった。
ああ、
ああ。
――やっと僕は、赦されたのか。
「…君の言いたいことは、よくわからないけど」
震えそうになる声と感情を抑えながら、僕はアイに答える。
アイ。
僕のアイ。
今度こそ、僕は君を正しく愛してみせる。
僕はもう、間違えない。
「ありがとう、僕を愛してくれて。――その言葉が、噓偽りない僕の気持ちの全てだよ」
魂からにじみ出るような喜びと感謝の気持ちを言葉にして、僕はアイに告げた。
「それではみなさん、さようなら!来年、この学園でまた会いましょう!!」
「待ってるよー!!!」
ちぎれんばかりに手を振りながら、トレセン学園で出会った新しい友人と別れの挨拶を交わす。
胸に温かいものを感じながら、僕は妹と一緒に帰路につく。
「色々あったけど、楽しかったね!お姉ちゃん!!」
「うん。…行って、良かったよ」
僕は妹の言葉に賛同する。
「でもウェルカムレースは不完全燃焼だったので、今からお姉ちゃんと家まで競走だよ!よーいドン!!!」
「あっ!ちょっと!!」
「あははは!!マイラー!!!!」
僕は道路のウマ娘専用レーンをすごい勢いで走っていく妹を追いかけて全力で走る。
自宅に着く頃には、冬だというのに二人とも汗びっしょりになっていた。
その後はシャワーを浴びた後、家族と一緒に晩御飯を食べて、就寝。
今日やる予定だった春休みの宿題が丸々残っていたが、知ったことか。きっと明日の僕がなんとかしてくれるだろう。
そうやって僕は来年トレセン学園に進学する幸せな未来を想いながら、眠りについた。
その日の夜、僕は夢を見た。
『ウェーイ!カミキヒカルくん見てる〜?今から君の大好きなアイちゃんに因子継承しま~す!!』
暗い部屋の中に、アーモンドアイから送られてきた動画を映すディスプレイだけが光っている。
ディスプレイには馴れ馴れしくアーモンドアイの肩を抱き寄せるキタサンブラックと、まんざらでもない表情でそれを受け入れるアーモンドアイの姿が映っていた。
『ごめんなさいヒカル、私もう貴方の☆1差し因子じゃ満足できない身体になってしまったの』
『えっ?ヒカルくんの因子ってそんなにショボかったの?アイちゃんかわいそー!
そんな因子ガチャの敗北者みたいな子はさっさと移籍させて、私といっぱい因子周回しようねー!!!』
『えへへ、よろしくね。楽しみだなぁ』
『私は1日10回までならオーケーだよ!じゃ、始めよっか!』
『…あ、その前にこれ。今日の継承ウマ娘のレンタル代』
『おおー!アイちゃんからレンタル代14万6500マニー貰いましたー!日本円で2000万円ぐらいです!多分!!』
『もう待ちきれないよぉ、早くぅ』
『アイちゃんがいやらしくおねだりしてくるのでそろそろ始めま~す!サポカをセットしてぇ、はい、よいスタート!
ヒカルくんはぁ…一人で窓際行って、すこれ(棒読み)』
最後にキタサンブラックが見下すような視線をカメラ越しに僕に向けた後、プツッ、と音を立てて画面が真っ暗になる。
ほどなくして動画の残り時間はゼロとなり、最初のタイトル画面に戻った。
僕の隣にアイはいない。
キタサンブラックに奪われてしまった。
僕は泣きながら窓際に行って、一人寂しくアイのイメージカラーである赤色のサイリウムを振るのだった……
「うわあああああああああああ!!!!!」
僕は布団をガバッと押しのけてベッドから半身を起こす。
なんだ今の悪夢はぁ!!!!!?