完璧で究極のアイドルがGI九冠バに転生しました 作:雑穀ライス
ついに6月になった。
今日は私の
私は目を瞑って、このトレセン学園であったことを思い出す。
ルビーの暴走、クロノちゃんの暴走、ゴールドシップさんの暴走、キタさんの暴走…
なんか私の知り合い、暴走してばっかだね!
えっ、お前が言うな?私の暴走ってヒカルのおっぱい揉みまくったことぐらいじゃん。その程度フツーフツー。
「調子はどうだ?」
パドックに続く地下バ道を歩いていると、社長が声をかけてきた。
「いつも通り、元気いっぱい。快眠快便、朝ごはんは3杯おかわりしてきたよ」
「初レースで緊張している様子もなさそうだな。なら良し。あとファンの前では絶対に
こめかみの血管をピクピク動かしながら引き攣った半笑いの表情で社長が言った。そのぐらいわかってるってば。
「じゃ、行ってくる」
「お前の実力ならなんとかなるだろうけど、くれぐれもケガだけはしないように注意しろよ。無事是名馬ってやつだ」
「はいはい」
ほっとけば全校集会の校長先生のように話が長くなる社長をあしらって、パドックに出る。
デビュー直後のアイドルグループのコンサートのように客の入りが疎らになっているパドックの観客席に、クロノちゃんとラブちゃん、カレンちゃん、ア
そして、私を応援してくれる友達の中にヒカルも一緒にいた。
「…勝ってくるよ」
私は誰にも聞こえない小さな声で、そう呟いた。
さて、レースまでまだ時間がある。パドックではこれからレースに出るウマ娘たちが自分のコンディションを観客にアピールするように様々なパフォーマンスをしていた。私は何をしようかな?笑顔で手を振るだけじゃあ味気ないよね?
よし、歌おう。パドックで歌ったり踊ったりしているウマ娘は割と見かけるし。
よーしみんなー、私の歌を聞けー。
「~~♪
~~~♪」
…歌っている最中に同じレースに出走するウマ娘たちの視線を感じたが、奇異の目で見られるのは慣れっこだったので私は気にしなかった。
そしてその判断を、私は後になって後悔する羽目になった。
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【
【芝1400メートル/左回り/新潟レース場 /天候 : 晴/芝 : 良】
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『注目の1番人気、12番アーモンドアイ。実力は完全に上位ですね。彼女の走りに皆の期待が集まっています』
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「――各ウマ娘、一斉にスタートしました。バラついたスタートになっています。
好スタートは14番ニシノウララ、向こう正面の合流点に向かいますが内から一番カタナが一気に出ています。
先頭変わってカタナ、追って14番ニシノウララ、そのすぐ後ろにアンポルタン、この内を突くように4番ゴールドシャッツが差を詰めています。
傍には11番のデルマミモザ、その後ろ1バ身差、外から上がる17番タンドルマン、その後16番モシモが続いていきます。
更には10番レップウ、その外から9番のオールドナシュワン、内から6番サクヤメイ。
3バ身4バ身開いたところに15番アースフライト、その後に12番のアーモンドアイです。
後方に位置をとって先頭まで10バ身ほど。ここから彼女がどう巻き返すのでしょうか」
私の前に10人以上のウマ娘がひしめき合って壁を作っている。
やばい。
やばい。
これ完全に負けパターンだ。
小学生のときに負けたレースは、全部この前方に壁を作られて追い抜けないパターンだった。
まだ左右に動けるスペースがある分本家のオペラオーシフトよりはマシかもしれないけど、この展開はキツい!!
ていうか壁が縦に長すぎる!!!!
…苛立ちでかかりそうになる自分の感情を必死に抑えて打開策を考える。
落ち着け、私。
もうこうなったら次のコーナーまでバ群が崩れることはない。
第4コーナーを回ってから根性で全員追い抜くしかない!!!
「――各ウマ娘、第4コーナーをカーブして先頭カタナに並びかけるニシノウララ、コーナーを抜けて直線に入りました。
3番手、外に進路を構えようとしている4番ゴールドシャッツ、差を詰めに行く2番アンポルタン、ここでようやくアーモンドアイがバ群を割って前に出る!」
コーナーを抜けて最終直線に入った瞬間、バ群を強引にぶち抜いて前に出る。途中で
斜行?知るかバカ!そんなことより強行突破だ!!!
「この間に先頭ニシノウララが単独で抜けた!リードは2バ身、3バ身!アーモンドアイが追う2番手に浮上!3番手は4番ゴールドシャッツ!
――ここでニシノウララ、1着でゴール!!!!」
しかし、私の強行突破は間に合わず2着でゴールイン。
ああああ悔しい悔しい!
最終直線短いよ!あと200mあったら勝ててたのにぃ!!
なんで
「あう〜…」
「完全に全員からマークされてたな。ま、一番人気の辛いところだな」
「これってイジメだよね?」
「イジメじゃなくて作戦だっつーの。お前それテイエムオペラオーの前で同じこと言えるか?」
レースを終えた私を迎えに来た社長に不満タラタラ、未練タラタラの様子で突っかかって行ったらぐうの音もでない正論で叩きのめされてしまった。
もう少しその、なんというか、手心とか人の心とかあってもいいと思うよ?
「それはそうと、1400mじゃ距離が足りなかったな。次は1600mをやろう」
だったら最初からマイルレースにしとけー。ぶうぶう。
「ま、終わったレースの話ばかりしてても仕方ない。切り替えていけ。…お前にとって本番はこれからだろ?」
そうだった。これからウイニングライブがあるんだった。ライブの前にシャワーを浴びて、ライブ用の衣装に着替えて、お化粧塗り直したりとやることが色々ある。
うじうじ悩んで時間を無駄にする余裕なんてない。
「レースで負けた分は、ライブで取り返せ。それでチャラだ」
「うん」
前世と違って、この世界で私はセンター以外のポジションで歌う練習もしてきた。
だから、たとえほかのウマ娘にセンターを譲っても私は輝くことが出来る。
所詮はレースで勝ったウマ娘の引き立て役Aだって?否定はしないけど、その主役を引き立てるための飾りは最高級の宝石だ。
今日の主役を綺麗にデコレーションしてお姫様みたいにした上で、私もキラキラ輝いてみせるからね。
「そういえば今日のレースで1位になった子の名前、なんて名前だっけ?」
レースが終わった後は心に余裕がなくて、1着になった子の名前を確認する余裕がなかった。
選手の控室にはスマホやタブレット端末の類の通信機器は持ち込めないので、自分のレースの結果を映している場内のテレビモニターを探して1着の子の名前をもう一度確認してみる。
「…ニシノウララ?」
――お前、本当にハルウララみたいだな
――おう任せとけ。そんときはハルウララ並のアイドルウマ娘に育ててやるよ
興奮のあまり、私の腕がぷるぷると震える。
「ま…またしても私の前に立ち塞がるかハルウララー!!」
またひとつ、私はハルウララの凄さと恐ろしさを心に刻みつけられたのだった。