完璧で究極のアイドルがGI九冠バに転生しました 作:雑穀ライス
私の
悔いの残るレースだった。もう少し早くスタートするかきっちりバ群を突破出来ていれば1着は狙えたはずだったのに。悔しくて思い出しただけで涙が出そうだった。
ちなみにルビーは危なげなく新バ戦を突破していた。可愛さ余って悔しさ百倍だ。
「次のレースはいつ出るの?」
「2か月後だな。それまでに出遅れ対策とバ群を抜ける特訓をしよう」
だからといって、いつまでも済んだことに対してくよくよしていても仕方ない。
社長に確認したところ、次の未勝利戦は2か月後の予定らしい。のんびりしたスケジュールだが、それまで特訓だ。
ああ、早くレースに出たい。
7月になった。
キタさんは4月に開催された天皇賞(春)に勝利してGI5冠ウマ娘になったが、6月に開催された宝塚記念では9着に沈んで負けてしまった。疲れが溜まってたのかなぁ。
あ、そういえばヒカルとその妹のア
というわけで、私は2年目の夏合宿に参加している。
えっ?新バ戦で負けたのに遊んでいる暇なんてあるのかだって?これは遊びじゃなくて特訓だからセーフなんだってば。
そんなことを内なる私に自問自答しながら私はバナナの形をしたゴムボートに跨ってぷかぷか浮かんでいた。はぁ、火照った身体が良い感じに冷やされて気持ちいい。
「集合写真、撮りますよー」
記念撮影兼夏合宿参加の証拠写真として、みんなで集合写真を撮る。
今回の合宿もチームスピカと合同である。トレーナー同士で中がいいのか、このチームとは何かと行動を共にすることが多い。
ちなみに集合写真を撮るカメラマンはキタさんだった。何かが起こりそうな漠然とした嫌な予感がするが、何が起こるのか全く予想が出来なくて逆にわくわくしてきた。「怖いもの見たさ」ってやつだね。
キタさんがスマホを構えて、そして全員がカメラに収まるベストアングルを探して少しずつバックする。
ぽこん。
「あっ」
そこで、キタさんが地面に置いてあったスイカにつまづいた。
そのまま後ろに転ぶのかと思ったら、彼女は海老反りになった状態でつま先の力だけで踏ん張り始める。
「ふんぬぅ〜〜〜!!!」
そして脚力だけで体勢を立て直したのだが、今度は踏ん張り過ぎて前方向にバランスを崩して前のめりの体勢でこちら側にすっ飛んできた。
カメラを起動したスマホを握った状態で。
スポッ。
「えっ」
交通事故を起こした
カシャッ。
「えっ」
そしてクロノちゃんの水着の中からカメラのシャッター音が鳴り響いた。
カシャカシャカシャカシャカシャカシャ
しかも連写モードで。
「ええええぇーーーー!!!!?」
「はわーーーーーっ!!!!」
お、おうふ。
流石の私でもこの展開は予測できなかった。
「そうはならんやろ」
「なっとるやろがい!!!」
クロノちゃんが涙目になりながら私のツッコミに怒鳴り返している間にもキタさんが握っているスマホはカシャカシャ音を立てながら無情にもクロノちゃんの水着の中を撮影し続けている。
…スマホから手を離せばすぐにカメラは止まるんだけど、二人ともなんでまだ撮影続けてるの?
やっぱりこの二人、すでにデキてるのかもしれない。
「ワンピース型の水着にしておけばよかった……」
ざざーん、ざざーんと波が押し寄せてクロノちゃんの足元を濡らす。
スマホからキタさんが激写したダイナミック盗撮画像を全部消した後、クロノちゃんは砂の上に三角座りをして落ち込んでいた。まあログインボーナス代わりにキタさんにセクハラされるのは今に始まったことじゃないし、夏合宿イベントでいつもよりログボが豪華になったとでも思っておけばいいんじゃないかな?知らんけど。
夏合宿の一日目はキタさんの特別ログインボーナスがクロノちゃんに炸裂した以外は特に問題は発生せず、無事に終了した。
――ところがぎっちょん。
「第19190721回!ゴールドシップ杯開催だぜー!!!」
「おー」
「ぱちぱちぱちー」
「悪夢だ…」
夏合宿の一日目を終えた私達は、去年と同じくトレセン学園の合宿先に自腹でやってきたゴールドシップさん達に捕まって彼女たちの泊っている部屋に連行された。
被害者枠は私とルビーとクロノちゃんとキタさん。ゴールドシップさん側のメンバーは去年のウェルカムレースで顔を合わせた主催者側のウマ娘たちが揃っている。
ゴールドシップさん、オルフェーヴルさん、ドリームジャーニーさん、ナカヤマフェスタさん、そしてステイゴールドさん。
この部屋にいるウマ娘だけでGIレースを20勝以上していることを考えると豪華メンバー過ぎてちょっと怖い。獲得賞金額合計の重みで床が抜けないか心配だ。
「もう日が暮れているんだけど、何するつもりなんだよ。この辺りにナイターレースが出来る施設なんてないぞ?」
「チッチッチ、走るだけがウマ娘のすべてじゃないぞ?クロ助」
人差し指を振りながらゴールドシップさんはクロノちゃんにそう言い放った後、懐から棒タイプのおみくじみたいなものが入ったケースを取り出した。
「今回の勝負の内容は王様ゲーム!赤色の棒を引いたヤツが番号を指定して命令させるってルールだ!!!」
「そのぐらい知ってるよ」
終始ハイテンションなゴールドシップさんに対してローテンションな返事をするクロノちゃん。相変わらずクロノちゃんはゴールドシップさんに対してだけは辛辣だ。キャラがかぶってるから対抗意識と同族嫌悪とかがあるのかもしれない。
文句を言いながらも不承不承な様子で王様ゲームに参加するクロノちゃん。なんだかんだ言って付き合いがいいのはクロノちゃんのいいところだ。そしてゴールドシップさんが関わるとオチ要員になるところまでがお約束である。なんだかあざといよねクロノちゃんって。
そんな感じで、またしてもゴールドシップさんのノリと勢いに押し切られる形で私達は王様ゲームをやることになってしまった。
……この時点でこの後に訪れる地獄を正しく想定していたのは、多分クロノちゃんだけだったのだろう。