完璧で究極のアイドルがGI九冠バに転生しました 作:雑穀ライス
私がこの世界に生まれてから数年が経った。
この数年間でだいたいこの世界のことが分かってきた。
その中で私が興味深かったのは、この世界のウマ娘のレースがどういう風に運営されているかという話だった。
お母さんは現役時代に20回レースに出走して、1着を取ったのは4回、2着を取ったのが4回、3着を取ったのが4回。それで3億円以上の賞金を稼いでいる。
レースのグレードによって賞金額に差があるが、そのうちお母さんが1着を取ったGIレース「エリザベス女王杯」の賞金額は1億3000万円だった。
ライブのチケット代やグッズの販売売上で稼いでいる分もあるが、1年に25回もあるGIレースの賞金を賄えるほどの額ではない。1回のレースの賞金に1億円以上も払える資金はどうやって稼いでいるのか、私は気になった。
その答えとは、レース場で売っている「勝ウマ娘投票券」、通称「バ券」の販売金額である。前世の馬券にあたるものだ。
前世と違うのは、ウマ娘が走ったレース結果を的中させたバ券は「建前上」換金することは出来ず、ウイニングライブの入場チケットとして使用出来るということ。
ライブ会場の席の数より着順を当てた人のほうが多かった場合当たりバ券の中から抽選となるので、たくさんお金を払って買った人や、1着から3着までのウマ娘をすべてを的中させるといった当てた人が少なくなる条件だとチケットの抽選で有利となる。
せっかく当てても他に当てた人が多ければ抽選に外れて無駄になる、という状況もあるらしい。握手券商法?ちょっと違うか。
ただ前世でもそうだったが、アイドルのコンサートには「ダフ屋」が付き物だ。
的中させた「バ券」を他人に売った場合その券はライブの入場チケットとして無効となるが、何故かどのレース場にもレース場の隣に「ダフ屋」を生業にしている人たちが店を構えて「バ券」を売りに来る人を待っている。
不思議なことにウマ娘のレースが終了すると、レースの運営が「バ券」の的中率を発表してくれて「バ券の正当な換金レート」を教えてくれるのだ。
ダフ屋さんはそのレートに従って「バ券」を買ってくれる。値引きもぼったくりもしない。そしてダフ屋さんが買った「バ券」の席は即座に運営が無効化して余った席は別のお客さんに販売される。
運営とダフ屋さんの間でめちゃくちゃ統制が取れているけど疑問に思ってはいけない。世の中には不思議なことがたくさんあると今世のお父さんも言っていたし、つまり知ろうとしてはいけないことなのだろう。
『ウマ娘のレースは健全なスポーツ・エンターテイメントです。ダフ屋は我々運営と関係ありません(公式発表)』
確か前世でも似たようなシステムがあるのを聞いたことがある。
三点倒立だっけ?
(※三店方式です)
それはさておき。
「アイちゃん、愛してる〜♡」
パンドラお母さんの愛が、重い。
四六時中私にベタベタベタベタしてきて猫っ可愛がりしてくる。
鬱陶しいとかそういうわけではないのだが、前世のお母さんとギャップがあり過ぎてなんだかむず痒い。
それとも前世のお母さんにもこんな優しい時期があって、それを私が忘れているだけなのだろうか。
「はぁ〜ん、アイちゃん大好き~♡ラヴズオンリィユ~♡スティルインラ~ブ♡」
お母さんがわけのわからないことを言いながら私に頬ずりしてくる。
そんなお母さんの過剰な愛情表現に私は抵抗せず、デレデレの蕩けた笑顔で猫吸いしてくるお母さんのされるがままになっていた。
前世の最期の瞬間に、私は「人を愛すること」を知った。
しかし私はまだ、「人から愛されること」に慣れていない。
でもこれだけは言える。
私は今、とても幸せだ。
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豆知識①
この世界のウマ娘のレースについて
ウマ娘が走るレースにはギャンブル要素はないのが原作の設定だが、それだとレースの賞金額をどうやって捻出しているのか作者の頭では上手い説明が思いつかなかったのでこうなってしまった。
なお、八百長試合の防止のためトレセン学園の生徒やトレーナーはバ券を買うのを固く禁止されている。
そのほかの影響として、アイドルファンの民度はコミュニティによって高かったり低かったりするものだが、金の恨みが渦巻くギャンブル業界の要素が加わったせいでウマ娘レースのファン全体の民度が更に悪化した。
中でも負けたウマ娘に対する腹いせで性的な嫌がらせ発言を匿名掲示板に書き込む事例が後を絶たず、今では悪しき文化として根付いてしまっている。
そしていつしかレースに負けたウマ娘をネタにオ◯ニーをする行為を、「バ肉にする」と呼ばれるようになっていた。
つまり負けたら不特定多数の人から夜のオカズにされてしまう過酷な環境でウマ娘たちはレースを走り続けているのだ。
なおバ券を買ってないウマ娘をバ肉にしたり、1着を取ったウマ娘をバ肉にするのは協定違反として同士から処罰される対象となる。