完璧で究極のアイドルがGI九冠バに転生しました 作:雑穀ライス
「社長、私トリプルティアラを取りたい」
「いい顔するようになったじゃねぇか」
お母さんの退院を見届けて練習に復帰した私は、早速社長にトリプルティアラを取りたいと相談した。
トリプルティアラとは、「桜花賞」、「オークス」、「秋華賞」の3つのGIレースを優勝したウマ娘に与えられる称号だ。最初に達成したのは1986年のメジロラモーヌというウマ娘でそれから30年ほど経った今でもトリプルティアラを達成したウマ娘は4人しか存在しない。私が5人目のトリプルティアラ達成ウマ娘になれば、これ以上の親孝行はないだろう。
ちなみにトリプルティアラとは別に「皐月賞」、「日本ダービー」、「菊花賞」の3つのGIレースを優勝したウマ娘には「クラシック三冠ウマ娘」の称号が与えられるが、こちらを達成したウマ娘も1941年から数えて7人しか出ていない。そのうちの一人があのオルフェーヴルさんだ。今年の夏合宿でクロノちゃんがオルフェーヴルさんにアホみたいな罰ゲームを誤爆させて青い顔してたけど、ちゃんと反省してね?
「取り敢えずは
「早くレースに出たいから一番最初のやつでいいよ」
「…となると1月7日のフェアリーステークスか1月8日のシンザン記念だな。フェアリーステークスはティアラ路線のウマ娘が出走する重賞レースだが、シンザン記念はクラシック路線のウマ娘も出走する。ちなみにティアラ路線のウマ娘でシンザン記念を勝ったのは2012年にトリプルティアラを取ったジェンティルドンナが最後だ」
へぇ、前回はシンザン記念を勝ったウマ娘がトリプルティアラを取ったんだね。
それなら。
「じゃあ、シンザン記念に出るよ」
12月になった。
私は1月のシンザン記念に出るのでこの月もレースに出ることはない。結局私はジュニア期に2回しかレースに出られなかったよ。しょぼん。
私がレースに出られなかった原因の一つでもある靴の問題はまだ継続中だ。慣れない新品の靴でぶっつけ本番でレースに出るのもマズいので、シンザン記念が終わるまでは取り敢えず間に合わせの靴で頑張ることになった。すでに4足目なんだけどなぁ。
というわけで、私の事情はだいたいこんな感じで靴の不安以外は特に問題ない。良くも悪くも平常運転が続いているので周りの話題はGIレースへの出場を決めたルビーのほうに集中している。
そして、ついに阪神ジュベナイルフィリーズが開催される日になった。
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【阪神ジュベナイル
【芝1600メートル/右回り/阪神レース場 /天候 : 晴/芝 : 良】
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【コース説明】
直線: 0~470m
コーナー: 約470~800m
最終コーナー: 約800~1130m
最終直線: 約1130~1600m
下り坂: 約1000~1390m
上り坂: 約1400~1510m
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『2番人気、11番ホシノルビー。僅差で人気のトップをロックディスタウンに譲ってしまいましたが、実力は引けを取りません。勝利が期待されるウマ娘の一人です』
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「さあ、これがこの世代の最初のGIレースとなります。スタートまもなくです。
――阪神ジュベナイルフィリーズ、スタートしました!かなりバラついたスタートです!
トーセンアンバーが後ろから、そしてリリーノーブルが好スタート。ホシノルビーは中団から、ロックディスタウンは外からです。
先頭争いはラスエモーショネスその後ろにラテュロス、3番手にサヤカチャン。外のほうからコーディエライトが4番手に出てきました」
ルビーのレースが始まった。
ルビーの人気は2番目で、一番人気になったのはオルフェーヴルさんの後輩のウマ娘らしい。言っちゃなんだけど、私はそのウマ娘のことを知らなかった。その子は去年のゴールドシップさん主催のウェルカムレースに招待というか誘拐されてなかったし、正直に言ってあのぐらいならルビーのほうが実力は上だと思う。
そのルビーは第2集団につけて、落ち着いたペースでゆっくりとレースを進めていく。
「最初の半マイルのタイムは47.8秒、平均からややスローなペースとなっています。おっとロックディスタウン早くも抑えられないのか仕掛けていきます。これを見たリリーノーブル外から追い上げるその後ろにはホシノルビー!」
折り返し地点を越えた直後の最終コーナーの少し前の位置から一番人気のウマ娘が前に出てくる。それを見たルビーもペースを上げて追走するが、コーナーを曲がったタイミングで
「最終コーナーを抜けて直線コースに入りました。先頭ラスエモーショネス粘っていますがここにロックディスタウン!さらにリリーノーブルと外からホシノルビーが来る!」
先頭集団が横に並んで最終直線に入る。ルビーは外側を走っていたので先頭の子から2バ身ほど引き離されていた。
でもさ、はっきり言って最終直線でルビー相手に2バ身差程度じゃ大したリードにはならないよ。
――初等部のとき、私があの子に何回負けたと思ってるのよ?
「真ん中からロックディスタウンとリリーノーブル!その間をついてマドモアゼル!外から来たホシノルビー!
リリーノーブルが抜けた!ホシノルビーが突っ込んでくる!三番手はマウレア!!
リリーノーブルか!?ホシノルビーか!?ホシノルビーだ!ホシノルビーが交わした!」
最終直線の下り坂でルビーが猛加速する。
最後の上り坂でわずかにスピードが鈍った
「阪神ジュベナイルフィリーズを制したのはホシノルビーだぁああああああ!!!!
勝ったのはホシノルビー!ジュニア級女王の座を射止めてこの世代の頂点へと一番に名乗りを上げました!!」
そのまま2着の子に1バ身差をつけて、ルビーはGIレースに勝利した。
「――勝利ウマ娘インタビューです!まずはホシノルビーさん、このGIレースを見事に勝利した今のお気持ちを一言お願いします!!」
「せんせー!私、勝ったよー!!」
「先生、というのはトレーナーのことですか?」
「えっと、トレーナーとは別の人で…小さい頃にお世話になってた人で、私の最初のファンになってくれた人なんです」
「なるほど、その方はホシノルビーさんの恩師に当たる方なんですね。それではここまで3戦3勝、無敗でGIレース制覇ということで皆の期待が集まっていますが、来年以降はどんな目標を持っているのでしょうか?」
「出るレースをすべて勝って、ウイニングライブで歌う!これが私の目標です!!」
「無敗でGIレース勝利の次は、無敗でトリプルティアラ達成ですか!素晴らしい目標ですね!
以上、見事な走りで阪神ジュベナイルフィリーズを勝利したホシノルビーさんでした!おめでとうございます!!」
笑顔でレース後の勝利ウマ娘インタビューにハキハキと答えるルビー。
その様子を見ていた私は、リポーターが勝手にルビーの目標をトリプルティアラ達成だと決めつけていたことに対してなんだかモヤモヤした気持ちを感じていた。
なんだろうこの感情。嫉妬かなぁ。
そんな感じの複雑な感情を胸の奥に隠しながら、私は観客の拍手を一身に受けて控え室に戻っていくルビーの姿を見送っていた。
とにかく、このレースを観戦して分かったことが一つある。
――私のトリプルティアラ達成の壁となるのは、間違いなくルビーだ。
後日ルビーが2017年度の最優秀ジュニア級ウマ娘・クイーン賞を受賞したことを聞いて私のその予感は確信へと変わった。