完璧で究極のアイドルがGI九冠バに転生しました 作:雑穀ライス
【変更点】
・ゴールドシップのウェルカムレースでアーモンドアイが開幕出遅れをやらかしたことに変更
・ウェルカムレースでアーモンドアイが
・ウェルカムレースのアーモンドアイの順位が語られていなかったので変更(8着)
年が明けて、1月になった。
年明けすぐのシンザン記念に出走する予定だけど、昨年お母さんがあんなことになったばかりなので今まで通り正月の3が日は実家でゆっくりと過ごすことにした。
「「「あけましておめでとうございます」」」
家族揃って新年の挨拶をしてから、みんなでウマ娘サイズのおせち料理を食べる。ウマ娘ではないお父さんが食べ切るには少し量が多いので残した分は私とお母さんの2人で食べるのが例年の慣わし…
だったのだが。
「あれ?お母さん、量少なくない?」
「んー、入院してからずっと食欲ないんだよねー」
お母さんの食べる量はお父さんと同じぐらいの量まで減っていた。まだ体調悪いのかな。ちょっと心配だ。
「アイちゃん、次のレースいつ出るの?」
「1月8日のシンザン記念。そこで勝ったら次は桜花賞で、負けたらチューリップ賞かな」
おせち料理をパクつきながら、お母さんの質問に答える。
チューリップ賞は3月に行われるGⅡレースで、3着以内に入賞出来たら桜花賞の優先出走権が貰える。でもティアラ三冠を狙うのならクラシック路線のウマ娘も出走するシンザン記念を勝っておきたい。
ジェンティルドンナに肖るって意味もあるけど、ティアラ路線よりもクラシック路線を選ぶウマ娘のほうが強いウマ娘が多いって話だからね。走る距離もティアラ路線より長いし。
「それはそうと!桜花賞に出るならアレは必要っしょ!?」
「アレ?」
「そう!アレ!アイちゃんの勝負服!!アタシ、アイちゃんにピッタリな勝負服のデザイン考えたんだから!褒めて!アイちゃん!!」
「う、うん。ありがとうお母さん」
お母さんが餌を強請る犬のような目で迫ってくるので私は迫力に押されて思わず頷いてしまった。
「でしょー!ごはん食べたら見せてあげるからね!」
食欲は減っても押しの強さはあまり変わっていないお母さんに私はタジタジになっていた。
お母さんは現役時代、自分の勝負服を自分でデザインしたらしい。
お母さんの勝負服は、プリティーな癒し系の女児向けアニメの変身後の衣装のような感じのフリルやリボンで可愛くデコレーションした衣装である。透け透けの袖から見える白い肌がセクシーで魅力的だ。
なお、飾りが多すぎてクリーニングが大変だったらしい。
そんなお母さんがデザインした勝負服ってどんな感じの衣装になるんだろう。なんだか期待と不安が丁度半々ぐらいの複雑な心境だった。
ご飯を食べ終えた後、お母さんと一緒にお母さんの部屋に入る。
「じゃん✩アイちゃんには〜、こんな感じのが似合うんじゃなぁい!?」
お母さんは机の引き出しから勝負服のデザインを取り出して私に見せつけてくる。
水色と白を基調とした、背中が大きく開いたノースリーブワンピース。私が愛用しているリボン付カチューシャと合わせれば、まるで「不思議の国のアリス」の主人公のような姿になる。
前世で死んだ後ウマ娘のいるファンタジーな世界に迷い込んだ私にピッタリの、可愛さとセクシーさを兼ね備えた最高のデザインだった。
「すご……」
「えへへ〜、良かった♪アイちゃんが気に入ってくれて。お母さん頑張ったんだからね!」
ドヤ顔で胸を張るパンドラお母さん。
いや本当にすごいよこの勝負服のデザイン。私の考えていた勝負服は前世のアイドル衣装だったけど、地下アイドル時代の駆け出しのときに着ていた野暮ったいというか、安っぽい感じの衣装だったのでこっちのほうが断然いい。それに私はあまり汗を掻かなくて熱が身体に籠りやすい体質なので、下品にならないバランスで肌面積を増やして走りながらクールダウン出来るように配慮されている私のために設計されたデザインだ。
流石は私のお母さん、私への理解度が世界一高い。
「それじゃあ、お母さんの頑張りを無駄にしないように絶対に勝たないとね」
「それは全然心配していないからヨシ!」
そんな和やかで幸せな団らんを楽しみながら、私の正月は過ぎていった。
その翌週、シンザン記念のレース当日。
「それじゃ、行ってくるよ」
「おう。クラシックウマ娘たちの度肝を抜いてこい」
社長と短く言葉を交わして、私はパドックに向かった。
パドックに出て周りのウマ娘たちの様子を見る。誰がクラシック路線のウマ娘なのかよくわからなかったけど、パドックにいるウマ娘の中に私が知っている顔はいなかった。パッと見ではルビーより速そうな子はいなさそうな感じだけど、強いて言えば練習以外で雨の中でレースするのは初めてなのと、靴の問題が不安要素かな。
大丈夫、いける。
このレースを勝って、桜花賞に出走して、トリプルティアラを獲るんだ。
私はこのとき普段以上に意気込んでいたが、そのせいでいつもやっていた「パドックで歌う」というパフォーマンスをすっかり忘れてしまった。
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【日刊スポシンザン記念(GⅢ)】
【芝1600メートル/右回り/京都レース場 /天候 : 雨/芝 : 稍重】
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【コース説明】
直線: 0~710m
上り坂: 約410~780m
コーナー: 約710~960m
下り坂: 約790~910m
最終コーナー: 約960~1200m
最終直線: 約1200~1600m
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『1番人気、3番アーモンドアイ。人気はファストアプローチと分け合う形になりましたが、僅差でティアラ路線ウマ娘ながら1番人気に推されています。
ジェンティルドンナに続く6年ぶりのティアラ路線ウマ娘の勝利が成るか、皆の期待が集まっています』
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「――強い雨の中、ファンファーレと歓声が聞こえてくる京都競バ場です。今日のメインレースはシンザン記念G3、芝の1600mを争います。
各バゲートイン完了、今スタートしました!各自飛び出し…アーモンドアイが出遅れたぁ!!」
やらかしたぁあああああ!!!
というわけで、私の今後を左右する大事なレースであるシンザン記念は最後尾からのスタートになった。私を推してくれていた観客が悲鳴を上げるがこっちもそれどころじゃない。
どうしよう、無理やり前に出たほうがいいのかな?
そこまで考えて、私はゴールドシップさんが開催したウェルカムレースを走ったときの記憶を思い出した。確かあのときも私が最初に出遅れて、無理して前に出た結果最後に垂れて負けたんだっけ。思い出したらなんかムカついてきた。
うん、苦い敗北の記憶を思い出しているうちに頭が冷えてきた。
大丈夫だ問題ない、まだ慌てる時間じゃない。
先行を走れないなら、最後に差せばいい。
「3番アーモンドアイ、タイミングが合いませんでした。観客席から大きな歓声が上がっていますが、どう挽回するのでしょうか。
さあまず先頭争いはツヅミモンが出ました。この娘もティアラウマ娘です。外からは11番カシアス、内から少し下がって4番ベルガド、その外をブランモンストル、間からマイネルエメです。
現在一番人気アーモンドアイ、後ろから2番目!さあこの前半のロスを巻き返すことが出来るのでしょうか」
顔に雨粒が当たる。
冷たい風が私の身体から体温を奪うが、むしろそれは熱が身体に籠りやすい私にとって好都合だ。湿った地面も足を滑らせることなく走れているし、問題はない。
「横殴りの雨の中、各バこれから3コーナーを迎えます。11番カシアス、軽快に先頭を走っています。今800mの標識を通過しました。タイムは48秒から49秒の間、雨の影響かやや遅いペースとなっています」
流れに身を任せたまま、私は折り返し地点を走り抜ける。
ほぼダンゴになったバ群の真ん中少し後ろぐらいに陣取るが、気づいたらインコース側の隣に
とりあえずチャンスだったのでその子の隣をキープしてプレッシャーをかけていく。ふふふ、これでもう進路変更できないでしょ?オペラオーシフトの恐怖に恐れ慄くがいい。
「11人のウマ娘がほぼ固まってコーナーを抜けて直線に入りました!先頭はカシアス、2番手にはツヅミモン、3番手は必死の表情でブランモンストルが食いついていく!そして外から追いこんできた一気にきたぞアーモンドアイ!!」
コーナーに入ったタイミングで
待たせたね、みんな。
ここからは私のステージだよ。
「アーモンドアイが凄い脚で伸びて来た!残り100届くかどうか!?先頭わずかにツヅミモン!しかしアーモンドアイがすごい脚で追い抜いていったぁ!!
これは恐ろしいウマ娘だ!新星現る!アーモンドアイいま一着でゴールイン!!!!」
最終直線で、私は7バ身差を一気にまくって1着でゴールを決めた。
最初に出遅れたときは冷や汗を掻いたけど、まあ私がすこし本気を出せばこんなものだよ。ふふふ。
よかった、ゴールドシップさん主催のウェルカムレースに参加しておいて。あのときの失敗の経験がなかったらこのレースでペース配分をミスってすべてを台無しにしていたかもしれない。
私が心の中でゴールドシップさんを思い浮かべながら感謝の意を捧げていると、私がイメージしていたゴールドシップさんがニコニコ笑いながら勝手に動き出して私に向かってヒップアタックを仕掛けてきた。
ドロップキックじゃないだけ手加減されていたのかもしれないが、そんなことはどうでもいい。おしおきしてやる…おしおきしてやるぞゴールドシップ!
「いや驚きました。出遅れたものの一気に直線で抜き去っていきました本当に末恐ろしいウマ娘ですアーモンドアイ!
クラシックウマ娘の強豪たちをまとめてなで斬りにしてしまいました!」
私の勝利を喜ぶファンたちからの割れんばかりのファンコールが聞こえてきたので、私は脳内でゴールドシップさんの幻影とバトルをするのを中断した。いけない、まだお仕事中だった。
私は雑念を振り払った後、観客席に向かって一本指を立ててアピールをする。
私が1番。
アーモンドアイに、負けはない!
私のパフォーマンスを見た観客からの歓声は更に大きくなり、レース場は熱狂の渦に包まれた。
「ご苦労だったな。じゃあ靴を脱げ」
「大丈夫だってば」
「いいから脱げ」
レースを終えて戻ってきた私に対して社長は労いの言葉もほどほどにして早速靴を脱がそうとする。ボイスレコーダーで録音してセクハラで訴えたら勝てるんじゃないかなこれ?する気はないけど。
「おい、爪割れてんじゃねぇか」
「血は出てないし、大したことないってば」
「んなわけあるか」
私の足の様子を見た社長はぶつくさ言いながら私の足の爪にマニキュアというか、赤チンみたいなものを塗り始めた。この様子だとまた靴の新調が必要っぽいね。
「今日から2週間、練習禁止だ」
そんなー(´・ω・`)