完璧で究極のアイドルがGI九冠バに転生しました 作:雑穀ライス
私は3歳になった。
歯が全部生え揃ったので、離乳食を卒業して普通の食事をしないといけない年齢だ。むしろ普通の子は2歳までに離乳食を卒業する。
えっ?「何故私は離乳食を卒業出来なかったのか」だって?
それはね。
…お母さんもお父さんも、お米を主食にしている家庭だったからだ。
私は好き嫌いは特にないけど、白米はちょっと苦手だ。
味が嫌いというわけじゃない。食べるのが、怖いのだ。
白米を見るたびに、前世のお母さんが癇癪を起こしてコップを叩き割って、そのときに飛び散ったガラスがご飯の中に混ざったことに気づかずそのまま食べた日の
ガラスの破片で舌を切って、飲み込みかけたご飯を必死に嘔吐した記憶は生まれ変わった今でも忘れることは出来ない。
私にとって、白米は
食べるのに、勇気がいる。
「アイちゃーん、ごはん、出来たよ~。一緒にいただきます、しよ~♪」
パンドラお母さんが私を呼ぶ。
子供用の椅子に座って、一緒にテーブルを囲む。
お母さんのお茶碗には大盛りのご飯が盛られていて、私のお茶碗にはお粥が盛られている。
「ねぇ、お母さん」
ここまで露骨にされると、鈍い私でも流石にわかる。
「なんでわざわざ、私のためにお粥を作ってくれるの?」
歯が全部生え揃った後も、お母さんはいつも自分が食べる料理とは別に私にお粥を作ってくれる。
それが私にはどうも理解出来なかった。
私にもお母さんと同じように白米を出せば余計な手間が省けるのに。
「え?そんなの決まってるじゃん」
「なんでそんなことを聞くの?」といった表情でパンドラお母さんが答える。
「アイちゃん、白いご飯大嫌いなんでしょ?」
私の秘密は、お母さんにあっさり見破られていた。
「前に白いご飯食べたとき、すっごい気持ち悪い笑顔浮かべて『おいしいよ、お母さん』って言ってたじゃん。
心が嫌がってるのに
わかるよそれぐらい。お母さんなんだもん」
ステージの上で何人ものファンを騙してきた私の「嘘」の笑顔は、お母さんにあっさりと見破られていた。
「アイちゃん」
ずい、とパンドラお母さんが私に顔を近づける。
「アタシに、嘘なんてつかなくていいんだよ?」
…パンドラお母さんが言ったその言葉を理解するのに少し時間がかかった。
そのぐらい私にとって衝撃的な言葉だった。
…
――「嘘」をつかなくても、いい?
「…嘘をつかなくても、お母さんは私を愛してくれるの?」
「もち!」
「…わがまま言っても、迷惑かけても、お母さんは私を愛してくれるの?」
「当たり前じゃん!」
嘘をつかなくても、お母さんは私を愛してくれる。
その言葉の意味を理解した途端、私の目からぼろぼろと涙が溢れ落ちた。
「ああっ!違うの!アタシ、アイちゃんを叱ってるわけじゃなくて!!?」
私が泣く姿を見たパンドラお母さんが慌てた様子で言ってくる。
「お母さん…おかあさん……」
私の心に刺さったガラスの破片がポロリと抜け落ちたのを感じた。
傷ついて、血を流して、流した血が渇いてかさかさになっていた私の心が急激に癒されていく。
今、自覚した。
この人は、本当に私のお母さんなんだ。
私がたまたまパンドラお母さんのお腹に宿っただけの他人じゃなかったことが嬉しくて仕方なくて、しばらく涙が止まらなかった。
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登場人物紹介②
フサイチパンドラ
1984年生まれ。現役期間は1998年から2001年まで。
スリーサイズはB94W65H89(子供を産んだため現役時代より微増)
本来の歴史なら2006年のエリザベス女王杯の勝利馬だったのだが、この世界ではアーモンドアイ(星野アイ)の誕生に合わせて活躍した時代が繰り上がったため彼女は1999年度のエリザベス女王杯の勝利ウマ娘となっている。
本人曰く「すっっっっごいウマ娘」なのだが、この世界では現役時代が
16歳でレースを引退して専属トレーナーと結婚し、18歳でアーモンドアイを産んだ。
アイに前世の知識があるおかげで「手のかからない赤ん坊」になったため、子育ての楽しいところだけを享受している。
幼少期に親から甘やかされて育てられた結果、子供を叱ることの出来ない母親になってしまったが前世で母親からネグレクトを受けていたアイと需要と供給が完全にマッチして親子関係は非常に良好。
アイの「嘘」を見破って「嘘なんてつかなくても私はあなたを愛してる」と告げるパーフェクトコミュニケーションを成立させたことでアイから「本当の母親」として認められた。
10数年後、「アーモンドアイの母親」として知名度が爆上がりする未来を彼女はまだ知らない。