今回はめちゃくちゃ大事な回です!episodeとかではなく、この小説の運命を大きく左右する回です。
ちなみに、episode6.5はココ編です。
昼休み、俺は北瀬と食堂で昼飯を食っていた。昼の食堂には多くの生徒が集まる。
俺はココが作ってくれたお手製の弁当があるため学食を買うわけではないが、北瀬はいつも学食を買って食べているという。
俺と北瀬はテーブルに向かい合って座る。北瀬はパンの袋を開けるともぐもぐと食いだした。
「なぁ、柚子木。お前のその弁当誰が作ってんだよ。超美味そう」
「ああ、これはコ……母さんが作ってる」
「お前の母さんかぁ〜、こんな美味そうな弁当作ってるのか」
北瀬は想像した。俺の母親がどのような人なのかと。
「あれだな。専業主婦だろ?絶対。じゃないとこんな美味そうなのは作れねぇよ」
そうです。この弁当を作っている人はほぼ専業主婦です。幽霊ですが。
そして俺の母親は専業主婦ではありません。共働きです。
「俺の家は共働きだから母さんの飯がクソまずくいんだよ。冷凍食品ばかりで」
「……俺、冷凍食品食った事ねぇわ」
「えっ?何?嘘だろ?新手のドッキリ?」
「いや、マジで。よくよく考えてみたら俺食った事ねぇわ」
俺がそう言うと北瀬はしばし絶句した。しばらくすると北瀬はポンポンと俺の肩に手を置いた。そして、何かを悟ったようにこう言った。
「お前は幸せだな。だから、他の人にも幸せを分けてくれないか?」
「えっ?」
北瀬は俺が弁当から目を離した隙に俺の弁当の具を取った。
「隙ありッ‼︎」
「あっ‼︎取られた!しかも俺が最後まで残そうとしてた肉‼︎お前、肉を取ったのか?学生にとっての宝であるお肉を?しかも牛肉を?」
「最後まで残してるのが悪い。俺は好きなのを先に食べるタイプ」
北瀬は俺から取った肉を美味しそうに食べた。
ああ、ヤベェ。ブチ切れそう。誰か。この俺の気持ちを抑えてくれないか?
「あっ、そうだ。お前が聞きたがってた話しないと」
「おい、話をそらすな」
「まぁまぁ、そう怒んなよ。それよりなんで幼乃ちゃんの話を聞こうとしたの?まさかロリコンの道に走った?」
「なわけねぇだろ」
すると、いつもの一言を北瀬はボソッと口にする。
「そうだよね。お前は白浜ちゃんがいるからね」
そう、俺には白浜がいる。だから他に誰も好きになるはずはない。そう思っていた。
もちろん今までの高校生活の中で俺は白浜以外の人の事を好きになった事はない。
でも、何かこの頃俺の気持ちが薄れてきているような気がしてしまう。
何故だろうか。俺は白浜の事が好きなはず。
そう、好きなはず。そのはずである。
……じゃぁ、俺は何故白浜が好きなんだ?今まで俺は白浜が好き。その事を常識としていた。だから、そこまで踏み込まなかった。
今、俺がしようとしている事は他の人からしてみれば『何故地球があるの?』と聞いているのと同じである。
『何故地球があるの?』という質問に対して多くの人は『分からない』と答えるだろう。もし、答えたとしても『神様がいるから』などであろう。しかし、それも問い詰めていくと『分からない』という答えになる。
説が幾つもある。しかも、それの真偽を確かめる事のできないものもある。
俺にとって『何故白浜の事を好きなのか』という質問は『分からない』である。
何故であろうか。
高校生活の中で初めて知り合った人だから?
笑顔が可愛いから?
素直な所が操りやすいから?
いつも一緒にいたから?
……分からない。俺は何故白浜が好きなのかが分からない。
前までは白浜と話す時も嬉しかった。スキップしたいような気持ちになった。
でも、今は違う。白浜と話す事が当たり前になった。なってしまった。だから、何とも思わない。思えない。
……俺は白浜の事が本当に好きなのか?