今回は題名がいい話っぽいですね。まぁ、そんな事はないですけど。
このコンテストはみんな自分で考えた論を壇上の上でただ言うだけ。でも、弥生はそのただ言うだけの行為がとても上手い。彼女の話し口調は聴衆の目を惹きつける。そして彼らはいつの間にか話に聞き入っている。
他者を惹きつけるその声はとても美しく、ハキハキと喋りとても聞きやすい。俺と北瀬は馬鹿だから今まで他の参加者が言っていた自論を理解する事ができなかった。
でも、弥生なら不思議と分かった。彼女が言いたい事がスラスラと分かる。頭の中に簡単に入り込む。
ヒトラーを知っているだろうか?彼は演説がとても上手かった。彼の演説は聴衆の心をガッチリと掴んで離さない。
弥生もそうである。その声に聴衆は惑わされる。実際に彼女がやっている事も、彼女の自論も他の参加者とはそう変わらない。されども、言い方一つでここまで変わる。
「分かりますか?これが私の考えたプラズマで臭いを惹きつける理論です」
彼女の演説が終わった。こんな事を高校生で分かるのは凄い事である。それに審査員たちは反論一つ出なかった。
彼女の言っている論はあまりにも正確すぎた。正確すぎて何も言えないのである。どうやっても間違いを探す事は出来ない。
もちろん、ただの高校生の俺もお手上げだった。間違いを見つける事は出来なかった。
失敗がなかった。いや、失敗のない事しかしていないのだ。失敗がなければ成功もない。弥生のやっている事は成功も失敗もない。
幼乃が今から見せるのは成功と失敗である。天才がする成功と失敗を目の前で見せる。
「さてとっと」
俺はある事をしに席を立った。
「柚子木。どこ行くの?」
「ん?ちょっとお手伝いをしに行く」
「幼乃ちゃんの所?ってか論文発表だろ?お手伝いとかいらなくね?」
そう、みんなは勝手に思い込んでいる。このコンテストが論文発表の場であると。
このコンテストのパンフレットにはこう書いてある。
『今まで自分が頑張って研究してきた事を誰かに伝える事を目的としたコンテストでありこの経験を将来のために活かすのが最終目的』と。
それだけであり、何も研究を目の前でしてはいけないというわけではない。ならしてしまえばいいのだ。前代未聞の大研究を。それは研究者としてなくてはならない事を教える。
失敗は成功でもある。失敗をするための研究を。
「じゃぁ、俺も幼乃ちゃんの所に行くよ」
「……そうだな。じゃぁ、来てくれ。用意があるんだ」
「分かった。じゃぁ、控え室に行けばいいんだろ?」
「そう、研究道具は一通り幼乃が持ってきたから俺たちはその準備」
「よし。じゃぁ、俺も行こう。まずは幼乃ちゃんに何をするのか聞かないと」
「だな」
俺と北瀬は幼乃がいる控え室へと向かう。
「まだ、俺は幼乃ちゃんからの恩を返してないからね」
「お前らしくねぇな。何かキモい」
「そう?俺そういう
俺と北瀬は幼乃のいる所へと走り出す。友の手助け。それも友の役目。