今回は少ししくったかもです。後でまた直そうかと思います。
幼乃の言うイリュージョンが観客に衝撃を与えた。それは専門家や審査員の人たちも同じであった。今まで見た事のない反応である。
幼乃はこの液体は何であろうかと聞いた。会場にいる人たちは本気で考え出した。多くの人は金属を溶かしているのだと考えただろう。
「酸か?」
「強い酸じゃね?」
「でも、粉の入れ方があまりにも雑だったぞ。違うんじゃないか?」
色々な答えが聞こえてきた。でも、どれも本質を捉えてない。幼乃が語りかけたい事を。幼乃が今まで誰にも話さなかった事を。
「今、色々な答えが聞こえてきました。しかし、それらは全て間違いです。実はこの液体はただの水なんです」
幼乃は堂々と自信を持ってそう言った。でも、その言葉に会場の人たちはどっと笑った。幼乃を馬鹿にした。そんな訳がない。あるはずなかろうと思う人たちが大勢いた。
でも、これは本当である。俺たちが壇上に立つ前に蒸留水にしておいた。つまり不純物は何一つ入っていない。
「まぁ、こう言っても信用してはもらえないでしょう。だから、もう一つ実験を用意しています」
俺と北瀬は幼乃の前に台を用意した。その台の上にはガスバーナーが置いてある。ほかにも氷とハンマー、そして少し厚めの例の金属の板状のものが置いてある。
幼乃は金属を手に取ると今からこれをハンマーで割ると言いだした。しかし、その金属はとても硬い。壊せるとは思えない。
すると、幼乃はガスバーナーに火をつけた。そして金属の上に氷を置いた。そして氷を置いた金属板をガスバーナーで
火によって熱せられて溶けた氷が
だんだんとガスバーナーの火が揺らがなくなった。
そして、少し待つと幼乃は「もういいかな」と言いだした。幼乃は金属板をガスバーナーの火の中から外へ出し、氷をはずした。
右手にハンマー、左手に金属板である。幼乃は氷があった所を軽くポンッと叩いた。
すると、金属板の叩いた所がボロッと落ちた。
観客は硬い金属が簡単にボロッと壊れた所を見て唖然とした。波紋のように驚きと疑問が広がった。
「どうでしょう。これは全て水の力で起きた事です。いや、水の力というよりかは、この金属の弱さと言う方がいいでしょう。今まで、この金属の欠点は大量生産できない事ぐらいしかありませんでした。レアメタルのように希少性が高いが、現代では欠かせない。新たな可能性を秘めているのではないかと期待されていました」
幼乃は机をバンと叩いた。バンと叩くと振動が空気を伝わり心を揺らした。今度は観客全員が幼乃を馬鹿にしなかった。認めたのだ。幼乃のやり方を。
「しかし、今のを見ていてどうでしょう。この金属は水が大の苦手なんですね。いや、もしかしたらこれは金属なのか?そうとも言えます。本当は金属光沢ではないのではないか。そうとも考えられるようになる」
幼乃は自分が脱ぎ捨てた白衣を踏みつけた。
「私は研究者です。でも、何故、論だけで全てを終わらせようとする人もいるのか。私の姉もそうです。私の姉は論ばかり考えている。姉は優秀です。だから、何でも当たってる。しかし、論は論。研究ではない。研究の中での些細なミスから生まれる発見もある。なのに、論だけだとその発見さえも見れない」
幼乃は弥生の方を向いた。弥生は今まで見ていた幼乃ではないような感じがしたのだろう。彼女は笑ってはいなかった。彼女も幼乃を認めたのかもしれない。
「失敗は成功である。失敗をすればそこから見える発見もあるし、もしかしたらそれが成功に一歩近づけるものとなるかもしれない。論は成功への道のりを教えてくれる。でも、道草がない。そんなのは面白いのか?研究者なのに研究をしないのは何故なんだ?」
その問いはこの会場にいる人全てに問いかけていた。研究者として何故研究をしないのか。研究をしたいから研究者になったのではないか。論を述べるだけが楽しいのか。
「私が見せたイリュージョンは全て私の失敗です。ある日、私が実験をしていた時、中性の液体を入れていたビーカーを倒してしまった。その時、私は気付いた。もちろん、その実験はやり直しである。失敗した。でも、新たなる事を知った」
金属だから水には溶けない。金属だから硬い。そう思っていたから見えていなかった。でも、失敗から見えた。
「最後に私はこれだけ伝えたい。私は研究が大好きだ。何度失敗しても、何回でもやり直せる。努力は絶対に裏切らない」