さぁ、episode6もそろそろ終わりますね。あと2回かな?
ちなみにepisode6.5は多分作中の中で一番シリアスです。やばいです。
日が暮れて赤く燃えるような空になる。それでも雲は悠々と動いている。
コンテストの閉会式が終わり、会場にいた観客たちの多くはは出口へと向かう。他にも、入賞者に花束を贈ったり、写真を撮ったりと和やかな雰囲気である。
今年のコンテストも弥生が一番であった。幼乃は惜しくも入賞ならず。でも、幼乃がしたかった事はやり遂げる事ができた。
俺と北瀬は幼乃がいる控え室に行く。そして、控え室に着いた。しかし、そこには幼乃の姿はなかった。代わりに、弥生がいた。
弥生は俺たちを見るとクスッと笑った。
「あらら、幼乃は君たちの所へ行ったけどすれ違っちゃったみたいね」
「その様っすね」
俺と北瀬が幼乃の所へ行こうとすると、弥生が引き止めた。
「あれって君たちが考えたの?」
「いや、俺たちが考えたのは発表の仕方だけです。研究とか、言う事の内容とかは全て幼乃が決めたんです。幼乃があなたに伝えたい事なんです。俺たちはそんな幼乃の背中を押してあげただけ」
弥生は金属を手に取った。ゴツゴツとした金属が水の中に入れられる。
「そう……そんな人がいるなんて幼乃は幸せね」
「それは違うと思います。あなたが一人になろうとしているだけなんじゃないんですか?」
弥生は溶けゆく金属を眺めながら優しく言った。
「そうね。そうかもしれない。私が人を拒《こば》んでいた。誰かに責任を持たせるのが嫌だった。キツくなるのは自分だけでいい。辛い事をするのは自分だけでいい。そう思えば思うほど、自然と私と人との距離が離れて行く」
「それだからあんな失敗をしたと」
弥生は首を横に振る。
「それは今までの考え方。本当は違った。幼乃の壇上に立つ姿を見ていてわかった気がするの」
「怖かったとか?」
「ええ。そう。私は怖かった。幼乃がいつか私を越すんだ。そう思っていた。幼乃には才能があるの。だから、幼乃にはいつか抜かされる。研究者として蹴落とされる。だから、その才能の芽を摘もうとした……ヒドイよね。実の妹なのに」
「でも、当人である幼乃は姉であるあなたと一緒に研究をしようとした。幼乃は研究が大好きだ。そんな姿を見ているとあなたは心打たれる。だから、幼乃には研究者としての道を諦めてほしいけど諦めてほしくなかった。それで結局はあやふやのままと……」
「そうね。ほぼ正解。でも正確に言ってしまうなら『諦めてほしくなかった』っていう方が強いかな。幼乃が必死に自論を言っている時に感じたけど、多分勝ってほしかったんだと思うな。私に勝って私の考えが間違っているって言ってほしかったんだ」
弥生は鞄を持つと出口へと向かった。
「幼乃は凄いよ。私が、私たち研究者がやらない事。できない事を平然と、普通にやってしまう。そんな幼乃に必要なのは私じゃない。君たちだよ。『友達』っていう繋がりが必要なんだ。だから、また幼乃が迷惑をかけてしまうかもしれないけど、そこがあの子の良い所だから」
弥生は会場の外へ足を一歩踏み出そうとした。
「あの子をよろしくねっ。友人くんたち」