今回から少し柚子木くんがショゲポヨになります。
朝、近くで目覚まし時計がけたたましく鳴り響く。
いつもとは違う起き方、機械的に起こされる。絶対に決まった時間に、まったく同じ音でただただ鳴るだけ。そこに人のような感情は一切ない。
目覚まし時計を止めた。すると、目覚まし時計は素直に従う。
いつもみたいじゃない。そんな違和感を感じながら俺は早く起きた。
いつもの俺とは違う俺。
ココのいない生活。この家でココがいないという事は普通の家に戻ったわけだ。
キッチンの方に俺は行く。いつもならキッチンでココが鼻歌を歌いながら朝食を作っている。しかし、今日、ここのキッチンからは鼻歌が聞こえない。朝食もない。あるのは昨日、ココが残していった手紙とシオンの花だけ。
手紙は何にもしない。ただそこにあるだけ。でも、そこにあるだけで重大な事実がそこにあるという事を俺に突きつけている。
ココはいなくなったんだ。その事実を俺に見せつけてくる。その手紙が邪魔で邪魔でしょうがなかった。破やぶいてやろうと思った。
でも、破けなかった。破こうとしても心の何処かでそれを許さない自分がいた。ココがもしかしたら帰ってこない。そんな考えが俺の中にあったから破けない。
ココがいなくなった今、俺はある事に気がついた。
「ここってこんなに広かったっけ?」
ココがいる時は家がガヤガヤしていて、ゆっくりするスペースなんてないと思ってた。だけど、ココがいなくなると広く感じる。別に、家具が無くなったわけではない。前とは変わらないはずなのに何故か広く感じる。
ココがいる事がこの家のスペースを埋めていた。そうする事によりぴったりと全てが繋がっていた。
広くなった家。静かな家。この家のこんな姿は初めてである。
俺はソファに寝っ転がった。今、俺を叱る者は誰もいない。俺に何か言う人はいない。そして、俺は学校があるのにも関わらずソファで寝た。
ピンポーン‼︎
俺がぐっすりと寝ていたら家のインターホンが鳴った。俺はそれを聞いたら飛び起きた。帰ってきたかも。そんな浅はかな考えを持って俺は玄関のドアを開けた。
でも、そこにいたのはココではなかった。
「こんばんは。柚子木くん」
「白浜……」
「私たちもいるぞ」
「神崎先輩、五条先輩……」
そこにいたのは白浜、神崎、五条であった。彼女らは俺が学校に来てないので心配だから来たと言った。
そう、俺は4時まで寝ていた。昨日は心配で夜遅くまで寝れなかった。だからであろう。
白浜は俺の事を見た。
「柚子木。どうしたんですか?疲れているのですか?少し顔がやつれていますよ」
「えっ?あ、ああ。まぁ、ちょっとあってな」
「でも、柚子木はきっと大丈夫です。強いですもの!」
白浜は俺の事を信用しているようだ。でも、俺は強くなんかない。だって、今、俺はこれまでにないほど心が脆い。
「柚子木くん!明日は学校に来れそうですか?」
「ん?ああ、まぁ、行ける」
そんな俺のはっきりとしない返事に五条と神崎は疑問を持った。でも、二人はこの場では俺に何も言わなかった。
そして、三人は俺に渡す物を渡して帰っていった。
また、一人の時間が訪れた。
いつ、ココは帰ってくるのか。そんなの分からなかった。
でも、俺は信じた。ココを。家族を。