今回は特にありません。
……学校。いつもみたいに起こしに来る人はいない。なのに何故か早く起きた。
冬に段々と近づいているためであろうか、とても寒い。
俺は朝の支度をして家を出た。いつもより20分も早い。
街の並木道の近くには黄色や赤い葉が地面に落ちている。地に落ちた葉の上を歩いて駅へと向かう。
駅に着いて電車に乗った。電車に乗ってつり革につかまった。
ガタンゴトン
ガタンゴトン
電車が動き出す。進むための予備動作で少し揺れる。つり革を持っている俺はよろめいたりなどしない。
すると、後ろの人が俺の方に寄っかかってきた。よろめいてしまったのだろう。俺はその人を見た。
「す、すいません……って柚子木くんだ」
「あっ、神崎先輩と五条先輩」
そこにいたのは神崎と五条である。どうやら寄っかかってきたのは神崎らしい。
五条は俺の事を見ると首を
「あれ?お前何でこんなに早い時間にいるんだ?遅刻常習犯のお前が早い時間に来るだなんておかしくないか?」
「先輩は俺をどんな人だと思ってるんっすか?」
「素行不良の生徒Y」
「素行不良じゃありませんから。あと名前で呼んでください。Yとか他にもいますから」
五条は俺の肩をポンポンと叩いた。刑事さんが容疑者に優しく事情聴取して誘導尋問するみたいに五条の影に何か怖い存在があった。
「で、本当は何があったんだ?何か隠しているだろ?」
単刀直入に聞いてきた。それを聞いた時、少しゾワッとした。何故、GHBの先輩たちはここまで勘が鋭いのか。そこが少し疑問に思った。
「何だ?白浜ちゃんにも言えない事か?」
「違いますよ……。ってか、白浜関係ないから」
俺のこの一言に神崎は気になる所があったらしい。
「柚子木くんは白浜さんが好きではないのですか?」
「いや、好きでしたよ。前までは。でも、今、なんかピンと来なくなっちゃったんですよ」
俺はこの頃、白浜がどうも魅力的に見えない。今まで白浜は白くて純白のベールがかかった天使のような存在であった。でも今はただの友達。
別に嫌いになったわけじゃない。でも、好きになれない。どこが好きになったのかさえもわからない。
「じゃぁ、柚子木はそんな恋のお悩みと?」
「いや、全然違います。俺の悩み事は結構深刻ですよ。ってか俺があいつに恋してるはずがないじゃないですか」
「あいつ?誰だ?」
「いや……そりゃ、言えないっす」
「えっ⁉︎教えてくれないの⁉︎千鶴は知ってるのか?」
「ええ、そこら辺は私の専門分野です。家に近づいた時に気付きました」
「以前?う〜ん……」
五条は考え込んだ。俺の悩み事が何なのかを。
「そうか!家にゴキが繁殖したのか⁉︎」
「それはそれで辛いですけど違います」
「えっ?じゃぁ、ベッドの下にあるエロ本がココちゃんにばれた?」
「惜しいっす」
「じゃぁ、引き出しの中か?枕の下か?」
「そういう問題じゃない」
五条の珍回答を見兼ねた神崎は五条に耳元で言った。
五条はそれを聞くと「えっ?」と衝撃的な顔をしていた。
「ココちゃんがいなくなったのか?」
五条はさっきみたいに人をおちょくるのとは打って変わって俺の事を心配しているようだ。
俺は「そうだ」と言った。五条は気まずそうな顔をした。
「その、すまん」
「いや、いいんすよ。どうせココは戻ってきますから」
今の俺はそんな不明確な事だけしか頼れない。
俺の心は徐々に脆くなる。