今回はまぁ、特に言う事はありません。
リビングで俺とココが椅子に座っている。テーブルを挟んで俺とココが向かい合うように座る。
二人の間には異様な空気が漂う。っていうか凄く気まずい雰囲気。
ココといつも一緒に飯をここで食べていたし、いつもここで生活していたのに気軽に喋れない。それはココも同じであった。ココも俺の事をチラチラと見ている。お互いが相手の出を伺っている。でも、それでは何も進まない。
俺はココにこう質問した。
「その、あなたはココですよね?」
……ヤバい。テンパりすぎてすげぇ当たり前の事聞いちゃった。そりゃココに決まってるでしょ……。
「いや、私は佳代って言います……。その、ココさんとは誰ですか?」
斜め上の回答がきたぁぁ!んでもってさらに質問も斜め上でしたぁ!予想をはるかに上回るまさかの回答。それを聞いていた俺はもう苦笑いをするしかなかった。
その苦笑いをするのにも苦労がいる。相手が不機嫌にならないように笑っておく。愛想笑いというやつだ。
俺は佳代にココの説明をした。
「ココは俺と一緒に住んでる幽霊です」
「一緒に住んでる⁉︎結婚しているのですか?」
「いや、そういうわけじゃないんですけど」
「でも男と女が一つ屋根の下で暮らしているのなら夫婦ですよ」
……うわ、出たよ。今の時代と昔の時代を象徴するかのようなこの違い。
まぁ、確かにそう思われても仕方がない。一つ屋根の下で異性が二人で暮らしているのは昔の人に言わせてみれば夫婦も同然かもしれない。
っていうか、まず俺とココじゃ結婚できねぇし。俺は生きている人間でココは死んだ人間。
俺は佳代にココの事を全て話した。俺の知っているココを。姿、形が佳代と同じ事、ココも狐耳と尻尾があった事、料理が下手くそな事、おせっかいな事など全て話した。
でも、ある事だけは話さなかった。佳代はココであるという事を。
それだけは言ってはいけないと思った。それを言ったら佳代がどうなるかわからない。
でも、ココが佳代になってしまった。どうすればいいのだろうか。無理に刺激するのだけは避けたい。けれどもどうすれば元にもどるのだろうか。
俺は神崎に電話をかけた。
「は、はい。ゆゆ、柚子木くん?どうしたの?」
「ああ、神崎先輩っすか?あの、相談があるんですけど……」
俺は神崎にこの事を話した。神崎はそれを聞くとしばらく黙り込んでいたが何かを閃いたようでもあった。
「何かいい方法ありますかね?」
「私は幽霊のお医者さんじゃないから……詳しくはわからないけど、前私が倉庫を掃除している時に見つけた巻物があると思う……」
倉庫から見つけた⁉︎めちゃくちゃ信用できないんですけど。
「それには何か昔の儀式とか何かが書いてあるから。まぁ、よく分からないけど一旦私の家に来てみて。明日は休みでしょ?他にも参考になりそうな巻物はいっぱいあるから」
「あざーす」
俺は神崎に礼を言って電話を切った。
やっぱりこういう案件については神崎に相談するのがいいだろう。
俺は電話を終えると佳代の所へと戻る。
佳代は俺が戻ってくると「終わりましたか?」と声をかけてきた。その姿はまるでココのような姿であった。いや、ココである?仕草とかもココである。
なら何故佳代という名前なのか。
俺はその時、ある予測を立てた。
ココの生前の名前は佳代だったのでは?と。