今回は特に言う事ありません。
ちなみに、今日は二話投稿するかもしれません。いつ投稿するのかはわかりませんが。
その日の夜は明るかった。村中に
俺は神様の墓石の所で空を見上げていた。別に空を見上げる意味はない。目線を村の方にも、森の方にも向ける事はできた。でも、しなかった。
怖く思えてしまうのである。村の方は敵の侵入を警戒していつでも殺せる準備をしている人たち。森の方は暗くて何も見えない。
でも、空も怖い。空はいつも見ているだけである。全てを受け入れて、全てを許容し包み込む。
そうなると、俺が何処にいるのかわからなくなりそうだから怖い。広い広い空に包まれると俺の居場所が何処でもよくなっちゃいそうで怖い。
俺の居場所は何処でもいいはずがない。なのに、空の下というほぼ永久的に逃げられない檻の中にいる俺たちはその一言でまとめる事ができてしまう。
俺の居場所はそんな一言で片付けていいのだろうか?いいや、それはダメだ。これは理屈とか、理由とか、理論とか無しでダメなんだ。俺の直感がダメだと言っている気がする。
それはココも同じである。この村が、村のみんなが、斎正が彼女のいるべき場所。そこがなくなってしまうかもしれない。
居場所がなくなったら一人ぼっちだ。
一人ぼっちになったら一緒に泣く人もいない。一緒に笑いあう人もいない。一緒に寝る人もいない。一緒にメシを食う人もいない。
俺だって今、自分の居場所を取り戻そうとしてる。一人ぼっちは悲しいんだよ。
俺が空を見上げていると、ココがお供え物を供えに来た。ココは俺を見ると不思議そうに俺を見た。
「あら?お侍さんじゃないですか。今日も星を見ているのですか?」
「はい。星を見ています。知っているのに何も教えてくれない星を」
ココは持っていたお供え物を置いてあった物と取り換えた。
ココはその時、微かな匂いを感じた。懐かしい彼の匂いを。でも、その事については何も言わなかった。そして何かを悟ったかのように微笑んだ。
「お侍さんは神様ですか?」
「俺が神様と?それは違います。私はただの人です」
ココはそんな俺を見てフフッと笑った。
「では、何処から何故来られたのですか?」
「俺は……と、遠い所から来ました。ある事を成し遂げに」
俺はそう言うともう何も言わなかった。それ以上言うと歴史に乱れが生じてしまいそうだったから。
でも、言いたかった。もう、二度とココが悲しむ姿は見たくない。
ココもその事については何も聞いてこなかった。
「ここから逃げないのですか?」
俺はココにそう聞いたが、ココは首を横に振った。
「私は約束したんです。『またここで会う』と。だから、逃げません。この地を捨てるような事はしたくない」
俺はそんなココの言葉を聞いてボソッと「偉いな」と言った。俺なんか約束も守ってくれなかったよ。
俺とココはしばらくそこで話していた。
そして、別れる時、ココは俺に名を聞いてきた。
「俺の名前は柚子木光牙です。光の牙と書いて光牙と言います」
「お強そうな名前ですね」
「そうでもありませんよ。誰も守れない光の牙ですから……」
「いや、多分それでいいんだと思います。守られてばかりで頼る事しか覚えることのない人より、光だけを与えられて後は自力で物事を成す人の方がいいと思います。そして、柚子木さんは多分そんな人だと思います」
ココはそう言うと戻っていった。
光だけを与える……か。俺はできているのだろうか。そんな事。