今回は少し光牙くんがココちゃんにイラっときますね。
「でさ、色々と聞きたい事あるんだけど」
「はい、そうくるだろうなと思ってました」
俺とココ。もう会えないと思っていたココに会えるのは嬉しい。でも、なんかもっといい感じのシチュエーションが良かった。なんで会えたのが牢の中なんだろう。
「なぁ、ココ。ここはどこ??」
「ここは神様の心の中です」
「心の中?」
「はい。ここは神様の閉ざされた心。感情を抑圧している所です」
「抑圧って事は外に出さないようにしてんのか?」
「はい。外に出さないようになっているんです。なのでここは監獄のような造りになっている。そして、私は『記憶』なんです。狐木ココとしての記憶です」
「ココの記憶?」
「そうです。幽霊は『記憶』と『思い』の二つでできています。光牙様が家で会った私は光牙様の記憶がなかったはずです。あれは、抜き取られているのです。必要最低限の『記憶』以外は全て神様が自分の心の牢屋に閉じ込めてしまいました。あと、その『記憶』にちょっとだけの『思い』も混ぜて」
「『思い』もあるのか?」
「ええ、ありますよ。たった一つの大きな『思い』か抜き取られたんです。私にとって一番大きな『思い』が。それはあなたを思う気持ちです」
「俺を思う気持ち……」
「だから、光牙様が来てくれた事は嬉しく感じる。光牙様が私のために神様の試験に臨んだ事も」
「えっ?それ知ってんの?」
「はい。知っていますとも。ここは神様の心の中です。記憶の世界の事なんて簡単に知れますよ」
「そうか……」
俺はココの方を見た。自由に身を動かす事もできないココが頑張って俺に近づこうとする。俺もそれに応えようとするが、ギリギリの所までしか行けない。その差は
「でも、光牙様はなんで来てしまったのですか?」
「えっ?」
「光牙様はなぜ、私なんかのためにここまで来たのですか?わざわざ危険なリスクを伴うかもしれないのに」
「そりゃぁ、しょうがねぇだろ。だってお前がいいからに決まってんだろ。だって、今のココはつまらねぇ。何をやっても無言で無表情。まるで何か心の愛が欠けちまったような感じがすんだよ。だからさ、お前がいいんだよ。バカだし、ドジだし、泣き虫だけど、笑った時の笑顔がスゲェあったかいからさ」
ココは俺に背中を向けた。本当に壁が俺とココにあるかのようである。
「でも、私は光牙様といてはいけないんです。だって私、幽霊ですもん。もう、私は人じゃない。幽霊は人と一緒にいても害を与えるだけ。それに、私わかっちゃったんです。自分の未練が……」
未練。それは幽霊たちがやり残した事をしたいがために現世に残る。その理由、やり残した事である。
「私、あの世界のように生きのびません。光牙様に助けに来てくれる事もありません。私はあの場で殺されます」
「殺される……」
「はい。でも、その時、私は斎正さんと結んだ約束を思い出してしまったのです。『あの地でまた会おう』と。その約束を叶えたかった。その時、ある声が聞こえたんです。『生きたくないか?願いを叶えたくないのか?』。私はその声の主に願いました。『私はあの人と一緒になるまでここにいなければならない』って言ってしまいました」
「それで、幽霊になったと言うわけか?」
「はい」
ココは「あはは」と笑った。その声はとても弱かった。ほんの少しでも秋雨が降れば落ちてしまう赤い落ち葉のように。
「馬鹿ですよね?私、本当はわかってるんですよ?もう、斎正さんには会えない事ぐらい。いや、多分会えていたんだと思います。でも、記憶を抜き取られてた私は覚えておらず、斎正さんも幽霊の姿の私に気づかなかったんでしょう。結局、私はいる意味のない幽霊なんです」
「いる意味のない?ココ、それは間違ってると思うぞ」
「なぜですか?私はもう成仏してもいいんです。未練なんてないはずだから」
「じゃぁ、成仏でもなんでもさっさとすれば?」
「でも、成仏できないんですよ」
俺はそのココの『心配して欲しいんです口調』にイラっときてしまった。
「何なの?そんなにも共感して欲しいの?私の過去を聞いてって事か?おあいにく様、俺は人の不幸話をさらに盛って話されるのが嫌いなんだよ」
「私はそんな事なんて……」
「じゃぁ、なんなの?いつまでも過去にへばりついてるわけ?過去にへばりついてて今、お前にいいことあんの?」
「別に、いい事は……」
「じゃぁ、忘れな。約束の事とかも全部な」
「そんな⁉︎それは……」
「じゃぁ、なんなの?いつまでもそこで待ち続けるわけ?いつになっても来ない人を待つわけ?何年も、何十年も、何百年も待ってるのにまだ待つの?俺が助けたココは前を向いていたぞ。少しづつだけど、お前とは大違いだ。あのココはもう、地球一周ぐらいしてんじゃね?」
その時から止まったまんま。受け入れたくなかったのだ。本当は、成仏する気なんて全然ないクセして。
ココの時はまだ止まっている。
なら動ける歯車になろうではないか。時の歯車に、運命の歯車に。油を注いで全てを動かそう。