今回も特に言う事はないです。
俺の鎖は一本。ココの鎖は三本。俺の残りの一本の鎖が妙にしぶとい。中々切れない。まぁ、鎖は心から思いをぶちまければいいだけだから、本当は俺が自分の抑え込んでいる思いに気づいていないという事なのである。
しかし、自分の無意識にある思いを知ろうとしても簡単には知ることは出来ない。暗闇の中に手を突っ込んで手探りで物を引っ張るような事。
今、俺は無意識の中にある思いを取り出せない状況にいる。泣いているココと向かい合わせで、俺はそんなココを見ていながらも近くに寄ることさえ出来ない。この鎖が邪魔して俺はココのところへと駆け寄ることができない。
自分は何もできないと思い知らされるのがまた辛い。声を掛けることはできるが、それだけでもココは全然泣き止まない。ただ泣く声を聞くだけ。
「ココ、泣くなよ」
「ゔぁい〜」
返事をしたのに未だ泣くココ。牢のような部屋ではココの泣き声が反響し合いさらに大きく聞こえる。
その声が俺には痛かった。だから、俺はココにこう言ってしまった。
「もう。泣き止まないから話進めるよ」
あっ、今、また目を背けた。スルーをした。俺はまたそんな事をしていいのか?また放っておいて勝手に話を進めていいのか?俺はしたくないって思ってるのになんでまたそんな事するんだ?
ダメじゃないか、俺。後悔はしたくないからここに俺はいるんだろ。なら、する事はなんだよ。
この鎖を引きちぎってココの所へ行って抱きしめてやる事だろ?「もう、大丈夫だから」って言いながらココの涙を
俺はココの所に行こうとするけれどココの所に行けない。なぜならこう思ってしまったから。
俺にはココにそんな事言う資格はないーー。
俺がココに何もしなかったっていう事実は変わらない。俺はココに何もしなかった。泣いているココを背にして突っ立てた事はどんな事になろうとも変わらない。
何もできず、何もせず、突っ立ているだけの俺を俺が許せない。後ろを振り向けばいいだけなのに何故俺は振り向かなかったのかと思う。
でも、今ならその答えが簡単に出る気がする。
怖かったんだ。見たくなかったんだ。ココに何か不幸な事が起きるかもしれないって直感的に思ってしまったけど、「かもだから」の一言で済ませてしまっていた。少しでも自分を誤魔化したかった。
そしてその結果が今の状況である。泣きじゃくるココに、それをただ見ている俺。手足は鎖で繋がれているけど、鎖がなくとも多分俺の行動は一緒だろう。
なぁ、俺、お前はそんな俺でいいのか?一言だけでも本気で声をかけてやればココは今よりずっと楽になるだろ。
もう一人の俺が自分に語りかけているような気がした。
俺は、
俺は、
俺は、
俺は、
ココを一人になんて絶対にしたくない。
俺は立ち上がった。自分が捕まっている牢から出てココの側に行こうと。
鎖が俺を行くのを邪魔したけど俺は無理矢理でも行こうとした。そしたら、鎖が切れた。そして、俺はいざ、牢を出ようとした。
その時、俺の足はふと止まった。体が石のように固くなる。
俺はココに三本の鎖がついているのが見えた。その三本の鎖はココの抑え付けられていた思いである。そして、その鎖は俺が行ってもどうしようもないはず。俺とココが一緒にいて出来てしまった鎖。それを俺が断ち切る事は出来るのだろうか。
いや、できない。むしろ増える可能性だってある。
俺はココの側に行くのを諦めた。すると、鎖が俺の腕に繋がれた。
俺はココの元に行かないようにした。俺は今、自分の鎖を自分で断ち切った。なら、ココも自分の力で自分の鎖を断ち切らなければならない。
そしたら俺もココの側に、隣に鎖を断ち切って行くから。
先に行く、後ろからついてくるという事はしたくない。隣でずっと歩いていたいから。
俺は泣いた。
「なんで光牙様が泣いているんですかぁ」
「知らねぇよ」
いや、知っていた。けど、言いたくなかった。
ココを待つのが辛いと。俺はココを見て泣く事しか出来ないのだと。