ココの鎖は未だ繋がったまま。冷たく、情を許さない鎖が思いをとどめている。いや、もう許しているのかもしれない。冷たく抑圧する思いと、その抑圧から解き放たれようとする思い。
そんな二つの思いが交錯して自分でもその答えが出ないのではないのか。どっちが本当の思いなのかココ自身がわかっていない。
俺はそんなココに一つ聞いてしまった。
「お前のその鎖はなぜ繋がったままなんだ?」
この俺の言葉はとても
ココだって早く事を終わらせたいはずである。なのに俺はそんなココのことを考えずに聞いてしまった。
俺も早くここから出たいという思いと、今のココが自分から出ようとするまで見ていないといけないという義務感の二つの板挟み状態である。その結果、俺はココの答えを
ココは頭を抱えこんで弱々しい声で言った。
「わかんないんです。やっぱりわかんないんです。自分がどうしたいのかも」
わからないというのは『行動』ではなく『思い』だろう。自分が本当はどう思っているのか。本当は二つの思いのどちらが、抑圧している思いであるか、抑圧されている思いであるかがわからないのだ。
「私は光牙様の事が好きです。大好きです。だからこそ、光牙様にはもう迷惑かけたくないから今すぐにでも離れたい。そうすれば、光牙様にも迷惑がかからないし、私だってもう傷つくこともない。でも、それをもう一人の光牙様が好きな私が許さない。許したくても許してくれない。光牙様と一緒にいた方がいい。きっと光牙様がそれを望んでるって知っているから。光牙様と一緒に居たいけど、光牙様に迷惑をかけたくない……。すいません。優柔不断で……」
優柔不断なんかじゃない。誰だってジレンマを持っている。俺だって今、ジレンマを持っている。白浜を好きなのか、そうじゃないのかっていうジレンマを。
思いの元は同じなのに、なぜか取る行動は正反対のものとなる。
好きっていう思いが二つの行動を作り出す。その行動はまったくの別物で、どっちがあっているのかもわからない。どっちが相手のためになるのかを考えた末すえに、自分が一番苦しんでしまう。
でも、自分だけ苦しいと言うとそうでもない。
「ココ、苦しんでんのはお前だけじゃねぇんだよ。見てるこっちも苦しいわ。なんとかしてやりたいのに、何もできない。大切な人が苦しんでんのを見るのは誰だって辛いよ。お前が阻止したかったのはこのことじゃねぇの?」
ココは俺の目を見た。
「お前を見るのスゲェ辛いわ」
「辛いって……」
「いや、まずお前、不幸そうな面してんな。ほかにやりたい事とかないの?」
「やりたい事なんてありませんよ。もう、私は幽霊ですから……」
「じゃぁ、お前が生きてた時、何がしたかった?」
「え?」
「いや、生きてた時。何かしたい事とかあるだろ」
「……まぁ、ありますけど」
「それは何?」
「斎正さんとあの地でまた会う事ですよ。でも、もう出来ないことなんですよ」
ココは不安わ紛らわすために少し笑った。でも、もうその笑いも底尽きたように感じられた。
「じゃぁ、なんでお前は無理だってわかってるのに成仏しないんだよ。お前が記憶を取り戻したのは夏休み後半ぐらい。それから、お前は俺の目の前からずっと消える事を考えてた。なのに、なんで成仏だけはしないんだ?」
「わかりませんよ……。本当になんで自分が成仏しないのか。無理だってわかっているのに」
それは実に簡単なことである。新たな未練ができてしまったから。その未練を終えずに成仏は出来ない。
「自分勝手な未練だな」