俺は女じゃないし、親でもない。だから、『俺がもし母親だったら?』なんて事を考えても事実になることはない。だから、俺のその考えは当人からの目線ではない。あくまで、味わうことのない他者からの目線である。
でも、他者は他者ならではの視線を持っていると思う。当人では見る事のできないものを他者は見る事が出来る。
その中でも一番当人が見る事のできないものは『当人自身の顔』である。鏡などの第三者がないと絶対に自分の顔を見ることはできない。
今、神様は自分の顔を見ることができない。神様の顔は手で隠れているけど、それでもよく見える。
神様の顔は『辛さ』や『苦しみ』などで溢れている。手で覆って隠しているのに、手の隙間から溢れ出ている。
「辛い……、私は生きていて良かったのか……」
絶望混じりの言葉はズドンとその場に落ちてきた。でも、その言葉がココを突き動かした。鉛のように重く、氷のように冷たい雰囲気の中、ココは神様を抱きしめた。泣き崩れる神様の後頭部に右手を持ってきた。
「生きていていいんですよ。だって、神様がいるからこそ、今、私がここにいて、光牙様に会えてる。それだけじゃない。他の守護霊の人たちだってそうだ。みんな、未練はあるのに行き場のない霊だった。そんな私たちを救ってくれたのは神様じゃないですか」
「でも、私は生きるのが辛いんだ。生きていると、私を殺した夫との記憶を思い出してしまう。辛い過去と楽しい過去のかけ離れた二つの事実を受け止めるのが辛いんだ」
神様はココの肩に額を
「大丈夫ですよ」
「いや、私はもう……」
「大丈夫ですって。ほらっ!お顔をあげてください」
ココは神様のほっぺを両手で少し潰した。そして、顔を上げさせる。
「ほらっ、私がいるじゃないですか。いや、私だけじゃない。他の
その言葉は守護霊としてか、死んだ者同士としてなのか。
「なぁ、神様。言っとくけどさ、あんたはもう一人じゃない。あんたには家族がいる。それは、あんたの
「私の子?」
「そゆこと。だって、あんたは守護霊として新たな人生を与えた。人生を与えるのは親の仕事だろ?だから、あんたは親だよ。少なくともココはそういう目でお前を見ている。単に、『主人』と『
神様はココの方を見た。ココは笑っていた。
「神様、あなたはもう一人じゃないんですよ。私たちがいるじゃないですか。だから、もう悩むことはありませんよ」
神様のその時の顔は何だったのだろうか。でも、やはり、溢れていた。涙がポロポロと。
「ありがとう……、ありがとう…………」