「教えてくれ……か」
幼乃はメモの破られなかった紙をペラペラとめくる。紙のめくられる音だけが部室に響く。
「別に教えてもいいぞ」
けど、幼乃はそんな顔をしていない。俺を見ていたが、俺を見ていない。もっと、俺の中のものを見ているようだ。
「何か気にくわないことでもしたか?」
「まぁ、気にくわないことなら毎日お前はしている。お前の周りにいるものはいつもお前が気にくわん。お前がトラブルメーカーだから私たちはいつもお前に振り回されている。GHBは依頼主の困っていることを助けるはずなのに、お前はいつも場を荒らす」
幼乃が言ったことは俺も感じる時がある。自分は誰かのために、誰かがもう困らないようにしなければならない。もちろん、俺はその意気込みである。
けれども、俺は時に自分自身で逆に困らせてしまっているようにも思える。赤石の時だってそうだ。元々、赤石の悩みを解消、つまり赤石がもう過去にとらわれないようにするのが目的であった。なのに、話の流れ的に赤石を生徒会に入れるという結果になってしまった。最初はそんなつもりはなかった。俺は赤石が生徒会になるように仕向けた。
助けないといけないのに、俺はいつも迷惑をかけている。そう思ってしまうのだ。
「でも、柚子木。お前はそれでいいんだと私は思うぞ」
「え?マジで?」
「ああ、そうだ。まぁ、私もお前に振り回された結果、実の姉である弥生と科学者として闘たたかわねばならなくなったのだが」
「根に持ってる?」
「そりゃ、まぁ、多少根に持っているぞ。私が『最悪』だと思っていた、絶対にしてはならないと思っていた選択をお前は私たちに強要させたのだ。が、それでいいんだ。私たちが行きたくない、選びたくないって思っていていつも逃げていた選択をお前は照らして見せた。どうなるか不安だったから行きたくなかったが、照らしてくれて足を一歩踏み出す勇気を得たんだ」
そんな風に真正面から言われると照れる。けど、そう思えてもらえてたのならそれはそれで嬉しい。
「お前は確かに最初私が思っていた『最高』の選択をぶち壊しにした。
今、俺は褒められている立場にある。けど、俺自身そんな嬉しくない。確かに周りの奴らはそう思っているかもしれない。けど、それを強要させた俺は偽りの『最高』でさえも選べなかった者である。
俺は弱いし、性格も悪い奴だ。
次の段階に行けるのか、行けないのかが怖かったから足を踏み出すことさえしなかった。やらずに後悔をしている。それは一番悔しい。
「で、話を戻すがお前は今、弥生と広路という女。どっちを応援している?」
普通、ここは広路と言うだろう。でも、俺はある思いがあった。
「俺は弥生だな」
「ほう、それは意外だな。私はてっきり広路と言うのかと思っていたが」
「まぁ、普通そうだろうな。確かに俺は門川と広路がくっついてほしい。けど、そうなってほしくもない」
幼乃は首を傾げた。
「それはどういうことじゃ?」
「そのまんまの意味だよ。門川と広路がラブラブになるのは嬉しいが、俺は今のままの二人の関係がいいんだ。だって、俺は今のままのGHBが好きなんだ」