湯島ちゃんがぁぁぁぁ!
とまぁ、episode9か10の伏線回。
昼休み、生徒が食堂にぞろぞろと流れ込む。そんな中、俺と北瀬、赤石、小深の四人で談食中。俺と赤石はお弁当、北瀬と小深は学食である。北瀬はラーメン、小深は唐揚げ定食。
俺はガツガツ食う小深に目を向ける。小深の食うスピードは男子並み、いやそれ以上である。その食べたものはどこへ行くのかと思い、なんとなく小深の胸に目を向けた。で、思わず一言。
「だからデケェのか」
なぜだか知らないけど、俺の視線に敏感な赤石は左手に持っていた参考書の
「さいっこう!」
と、俺ではなく北瀬が叫ぶ。小深は「北瀬に見せたわけじゃないんだけどぉ〜」なんて言いながら北瀬のラーメンの上に乗ってるチャーシューを奪って食う。北瀬はまた発狂する。
「おい、小深。そんなに肉食ってたら太るぞ」
「胸だけね」
「ありがとうございます!毎晩のお供にさせていただいてます」
「うむ。よろしい」
赤石はまた俺の頭を参考書の角で殴る。俺は赤石が何の参考書を読んでるのか気になったから顔を近づけた。
「なっ‼︎ち、近い!」
「いや、何見てんのかなって」
その本にはこう書いてある。『話術の達人だべ』。変な題名であることは置いといて、赤石も生徒会をやる気になってくれているのはとても嬉しい。
「おい、赤石、顔赤いぞ。どうした?風邪?」
「い、いや、そんなんじゃない。暑いだけだ……」
「え?大丈夫?明日生徒会選挙なんだから、休みとかマジ勘弁」
「わわ分かっている!ただ、その……いや、なんでもない……」
それでも赤石は顔が赤い。やっぱり熱でもあるんじゃないだろうか。俺は赤石のおでこに手を当てた。
「あっつ!」
とても熱い。これは熱でもあるんじゃないだろうか?
俺が赤石の心配をしていると小深と北瀬はニタニタと笑う。
「何、笑ってんだよ」
「いや〜柚子木はつくづく鈍感だなぁって思っただけだよ」
「え?鈍感?手の感覚?」
「はぁ、まぁよくそこまで鈍感よねぇ。同じ気持ちである由美の心はよくわかる。私もその境遇になったらそうなってるから」
え?何?俺悪いことした?あれ?俺今さっきまで普通に友達と喋ってただけなんだけど。俺のどこに非があった?
「ねぇ、北瀬。俺は何でこんなに責められなくちゃいけないの?」
「自分で考えろ。すぐに出るぞ、答えなんか」
いや、出ないから聞いてんじゃん!出てたらお前には聞いてねぇよ!
北瀬はボソッとこんなことを言った。
「そう言えば、このメンツで飯食うのって珍しくね?」
「まぁ、そうだな。いつもなら白浜と倉本、湯島がいるのにな」
この頃湯島は休みがちである。北瀬以外、その理由は知っている。湯島は病院に入院しているらしい。持病が少し悪化したんだとか。
俺たちは湯島からお願いをされている。北瀬には言わないでほしいって。自分の体が弱いことを言わないでと言われているのだ。
北瀬が好きだから、だから湯島はわざと離れようとしているのだろう。北瀬から離れて忘れてほしいんだ。
北瀬は今笑っている。湯島がどうしているのかも知らずに笑ってる。
北瀬は湯島の話題をふってきた。
「この頃、俺の可愛いガールフレンドが学校に来てないんだけど、あれって何?俺って嫌われた?」
「じゃねぇの」
「まぁ、嫌いになるわな」
「…………」
テキトーに相槌を打つ俺と小深、そして参考書を見ながらガン無視する赤石。
「ヒドイ‼︎みんな!僕泣いちゃうよ?」
「泣け」
「うわぁぁん!」
「嘘泣きお疲れ」
北瀬の話を軽くあしらいながら、三人は察してやれよと心の中で強く思う。
赤石は放課後、生徒会室に来いと俺に行ってきた。
俺たちが飯を食ってたら予鈴が鳴る。俺たちは教室へと戻っていく。
「さてと、これで満足か?」
俺は自分のポケットに入っていたスマホを手にする。スマホは電話モードとなっている。『湯島みのり』の電話である。
「決心はついたか?」
「うん。やっぱり好きな人の声って元気でるね」
「手術はいつすんの?」
「来年の1月。まだ、進行はそんなに早くないから来年でもいいでしょうって」
「ふ〜ん。あっそ。北瀬に伝えたいことは?」
「ないよ。だって、ここで伝えちゃったら、彼から電話してくるじゃん。それを無視するの辛いから……」
「……分かった。じゃぁ、何も言わない」
「うん。ありがとう」
湯島は電話を切ろうとした。俺は湯島にあることを教えた。
「声、震えてたぞ」
「うるさい」
彼女はそう言うと電話を切った。電話を切ったのに、彼女の泣き声が聞こえてきたような気がした。