全校生徒の目の前で
次の話に進めようとするも、どうやって次に進めればいいのかがわからない。その結果、話が長々と続いてゆく。何も頭に浮かばず、無言になるのが一番嫌だからそれを避けようとするばかりに、頑張って話をつなげてしまう。ダメなのにつなげてしまうのだ。
が、喋っていれば段々と喋るネタも減ってくる。生徒は全然笑わない。内心、めっちゃ泣いている俺。
早く赤石につなげないといけないのに、思わぬところで時間を食ってしまっている。早く壇上から降りたいのに降りることができない。
足は石のように固まり、全然動かない。校長先生がよくあそこまで長く喋れるなと思わされてしまう。
「で、ではこれから生徒会立候補者の演説を行います」
何とか強引に話を終わらせた俺は赤石を壇上に呼び寄せる。強引に話を終わらせたため、何となく生徒の間には不快感が残る。話を聞いていない生徒は『ダリィ〜』って言いながら隣のやつと喋り出す。
マイナスの雰囲気が漂うこの状況で、俺は赤石にバトンタッチである。全然赤石の役に立っていないことがどこか背中を重くする。すごく後ろめたく感じてしまう。
俺が壇上から降りる時、壇上へ上がる赤石とすれ違う。何か話しかけようとするが、いい言葉が思い浮かばない。
俺が苦しまぎれで紡ぎ出した言葉が口の中に出た時、赤石のこんな言葉が聞こえた。
「大丈夫。大丈夫、私」
赤石はそう
でも、それでも、そこにある。一歩一歩、彼女の足が壇上への階段を上るのだ。どんなに弱くても上がろうとしている。
少し前までは止まっていたその足が今は前へと向かっている。スポットライトが当たる場へ上がっているのだ。今まで味わった嫌な過去を踏んで前へと進む。
進む道は地獄であっても信じた道であれば天国とも化す。あとは、それをどう繋げていくのか。それだけである。
赤石は壇上に立ち演説台の上に手を置いた。マイクを口に向けさらっと言葉を言っただけだった。
「私は別にこの生徒会を自ら立候補したのではない。友達がやれと言ったから私はやっている。それだけだ。でも、やるからにはやる。以上」
赤石は少しの言葉を口に出しただけであり、あとは何も言わなかった。そして、発言した後、堂々と壇上から降りる。
たった数十秒の事。発言した言葉は数えることさえできた。全校生徒、先生が見ている目の前で選挙に無関心であるということを言葉で、態度で見せた。喧嘩を売っているとも捉えられる。
けど、その言葉はどのような形であれみんなを振り向かせた。会場にいるみんなが振り向いた。寝ていた奴も、話していた奴も、スマホをしていた奴も、全員が赤石の方に振り向いた。赤石を見た。
へこへこと頭を下げて当選しようとしているのではない。投票者に歯向かっているようである。
それでも、その姿に嘘は感じられない。だから、どこか信用できる気がする。いかなる形であれ、みんなを振り向かせ、注目を浴びる。そして、彼女はそれを一気に自分の方へとたぐり寄せた。
「何あいつ、面白そうなことを言うじゃん」
「マジうける」
「バカじゃねぇの?」
いろんな声が聞こえてくる。でも、それでいいんだ。それだけでいいんだ。嘘で塗り固めたりはしない。できないことを述べはしない。本当に現実で起きていることを、これから起こすことをただ述べればいいのだ。
彼女はもう光は追えないのかもしれない。人に裏切られた時から、もう光を追う力をなくしたのかもしれない。
だから彼女は今ある道を歩いているしかないのだ。でも、その道は舗装された道である。誰も落ちないし、誰も怪我をしない。そして、その道を舗装しているのは彼女である。
光を追う力がなくとも前は見ている。夢を実現できなくても、現実を良いものへとしている。
現実を高くしていけば段々と夢に近づくものである。
でも、絶対に夢に辿り着かない。だから彼女は光を見て、光を追う者の姿に憧れるのだ。
彼女はスポットライトの外から出た。