今回は少し少ないかもです。
赤石の演説はみんなの視線を奪った。どんな生徒も赤石が刈り取ってしまった。この行為は言ってしまえば、次の人の配慮なしにハードルを上げていることと一緒である。
次の人は植木である。この一年間、生徒会で頑張ってきたので、生徒たちからの信頼は大きい。しかも、会長が清戸であったので、活動的だったから生徒の大半が植木のことを知っているに違いない。
けれど、正直言って彼女に『才がある』か?と聞かれれば、答えはこう出てしまう。
才はない。ただの凡人である。
彼女の頑張りは誰もが分かっている。多分、頑張りだけなら生徒会一かもしれない。
しかし、凡人は頑張った所で元々の天才には敵わないのが現実である。
今の植木は死にそうな花である。アスファルトの上で
壇上へ向かう一歩が小さい。あまり喋らないタイプということが壇上への道を歯止めする。色々な不安が、怖いという思いが彼女のたった十数歩の距離をぬかるむ底なしの泥沼としてしまっている。
今は一歩一歩足を動かしてはいるが、止まってしまったら最後、泥沼に足を囚われて動けなくなってしまう。
会場にいる他の生徒は、まだ赤石の話をしているし、赤石のことを見ている。つまり、次の人のことなんて一切眼中にないということ。
植木は繊細な人だからそういうのをすぐ感じ取ってしまうだろう。
ああ、またほら、足が遅くなる。
皮肉なものである。天才と凡人の差がここまで明白に映るのは。どんなに経験を重ねても所詮は凡人よりちょっとすごいだけで、天才なんかになれやしない。
そう思うとさらに、泥沼にはまっていく。抜け出せないほどに。
そうなったらもう助かる方法は何もない。
誰かが手を差し伸べてくれる以外に。
法前が植木の背中をポンっと押した。
「行ってこいよ。大丈夫、心配すんな。この一年、無駄じゃない。お前の頑張りは一番近くで見てきたつもりだ。できる。お前なら」
経験があったところで凡人は勝てやしない。けれど、それは一人でという意味である。
経験は人との輪を
辛くても、苦しくても、認めてくれる人がいるから、見てくれる人がいるから彼女は壇上へと向かい始める。背中を押してくれたから彼女は壇上へと行くことができる。
そして、背中を押す手が届かなくなっても彼女は歩いた。