法前は次期生徒会長である。なのに彼の歩き方は威厳があるとは思えない。壇上をスタスタと歩いているはずなのに、誰も気づかない。というより、自分から目立とうとはしていないみたいだ。
生徒会長となる者、みんなから信頼されてナンボ、功績をだしてナンボである。そして、今、この場は自分に信頼を寄せるための場である。自分の優れている所や今後学園生活を過ごしやすく改善する所を全校生徒の前で話すのが普通である。赤石は珍しいタイプではあったが、植木はそこらへんの所はちゃんと演説してた。まぁ、全校生徒が聞いてるかどうか分からんけど。
今、法前にはその意思が一切ないようにも感じられる。全ての責任を負うはずの生徒会長が、こんなにもグダグダした人なら、まず第一印象は最悪である。
全生徒の先頭に立つ者がこんなにもだらしのない奴なのはどんな奴だって嫌だと言うだろう。
法前が壇上にノコノコと出てくる。生徒たちの間からクスクスと笑い声が聞こえてくる。
「何あれ?ダサくな〜い?」
「あれが新しい生徒会長かよ。頼りねぇ〜」
「人数少ないからやる気失くしてんじゃね?アハハ、バカったらしー、生徒会とか」
意外と壇上からでも生徒の声は聞こえるものである。法前にもその声は聞こえていた。
法前は目の前にあるマイクに口を近づけて、最初に言った一言は
「てめーら、いっぺん臭ぇ口閉じろ」
法前の一言は一瞬、会場を凍らせた。数秒後、会場は一気にざわめき始める。
法前は進んで出るタイプの人じゃない。物事を見計らい、時が来たら行動するタイプの人。だから、変に自分から動こうとはしない人だ。
でも、この事態は法前に考えがあって引き起こしたことなのだろうか?いや、そうじゃない。いつも冷めた顔している法前だけど、それでも、彼の中にはちゃんと熱いものがあるのだ。だから、仲間を
彼は会場がざわめき始めたらマイクを手にとって自分の思うことを話し出した。
「あんたらさ、何偉そうに人のこと侮辱してんの?あんたらにそんなことできる権利はある?そんなことやってんだったら単語の一つでも覚えたほうがマシなんじゃないの?」
そう、法前はこの前やった中間テストで学年1位の座を取っている。言われたら言い返す。コテンパンに再起不能になるまで言い尽くす気である。多分、そうでないと気がすまないのであろう。
「別になんと言おうと構わないけど、まずは次期三竦みの俺を『三竦み』の座から引きずりおろしてからにしてくんない?」
『三竦み』の3つの座のうちの一つは生徒会長に固定されている。つまり、生徒会長になる人は強制的に三竦みとなる。
『三竦み』の言葉の重みはこの学校に通うものなら誰もが知っている。「彼らだけは相手にしてはならない」とまで呼ばれているほどである。
そのレッテルはとても強い。その言葉を出したら、全校生徒がすぐに黙り込んだ。
「あのさ、君たちはペチャクチャ喋ってるけどさ、誰が喋っていいって言った?喋っていいのは司会と生徒会だけなんだけなんだけど……あっ、もしかして喋ってる人たちみんな生徒会をやってくれるのかな?」
うわっ、法前のガチ本気ドSモードじゃん。コエェェ。いっちばん相手にしたくないね。あれは。相手にしたら俺が肉片になるわ。
「俺たちが頭下げて生徒会役員募集してた時は誰も入ってくれなかったよね?見て見ぬふりみたいな感じだったけどさ。それで、また君たちは必死で頑張ってる人に見て見ぬふりをするわけ?失礼じゃない?今は聞くだけでいいんだろ?そんな楽なんだったら少しは黙って聞いとけよ」
法前の言葉はもう暴言でしかなかった。けれど、『三竦み』ってことと、『筋が通っている』っていう2点があるから誰も言い返そうとはしなかった。
俺はこの法前の話を聞いた時、あることを思い出した。それは清戸と話していた時である。
「あのな、歴代の生徒会長はみんな『暴君』みたいな名前で呼ばれるんだよ」
「暴君?なぜに?」
「いやぁ、これはほぼ呪いのようなもんなんだよ。この学校の呪い。一番最初の所で暴君みたいになるの。だから、俺の名前は『カエサル』。まぁ、俺の場合は最初は最悪だったけど、段々と認められるようになってきたしね」
清戸の言葉は確かであった。今、法前は生徒に向かってキレている。
それはまさに『暴君』の誕生でもあることを意味するのだ。
王は仲間のために暴君となる。