あと、数話でepisode7は終わると思います。
学校の最寄り駅から一つ隣の駅で降りて、その駅のすぐ近くにあるファミレス『シャイゼリア』。広い店内、綺麗な内装。同じ制服を着た人たちもいる。
俺と赤石と倉本はそんな店に来た。もちろん、倉本は無理やり連れてきた。
俺たちは席に座り、メニューを見る。みんなで食べれるものがいいので、三種類のピザとドリンクバーを頼む。
3人、ドリンクバーを取りに行くために席を立つ。倉本は椅子の下に置いてある自分のカバンに手をつける。
「おい、
俺が険しい顔で倉本に質問する。倉本は無言のまま渋い顔をする。
「ど、ドリンクバーに……」
「ドリンクバーにカバンは必要ない」
倉本の脱走を未遂にして、俺たちはドリンクバーを取りに行く。俺は倉本の首根っこを持って運ぶ。
赤石は機械にカップを置き、カフェラテのボタンを押す。すると、機械からカフェラテがカップに注がれる。赤石がカフェラテを飲むのは
俺は『のっちゃん』のオレンジ味をコップに注ぐ。まぁ、柑橘類は大好きだから……。
俺が『のっちゃん』をコップに入れていたら、倉本がジンジャエールを指差した。
「柚子木、あれ入れろ」
上から目線だったのがすごく気にくわないが、強制的に連れてきてしまったのも俺なので口答えはしないでおく。
3人とも席に戻って、自分の飲み物を飲む。
「……」
「……」
「……」
3人とも相手を見ているが、そこに言葉は出てこない。言葉が出ないので、段々と気まずい雰囲気になりつつある。
「おい、お前ら少しは話そうぜ」
俺が何とか気まずい雰囲気の中に言葉を入れようとするが、
「イヤだ」
「イヤだ」
と2人から言われてしまう。2人ともムスッとした顔で俺を見るので、俺の心は今にも折れそうになってしまう。
2人は俺をただただ睨むばかりである。倉本に睨まれる理由は分かるが、赤石のは本気で分からない。さっきから赤石がずっと無言なのがなぜだか分からない。別に悪いことはしていないんだが。
「じゃぁ、由美は何で怒っているの?」
俺は赤石にそう聞いた。けど、聞き方が悪かった。
「『じゃぁ』って何?この打ち上げって私のための打ち上げでしょ?なのに、私よりも倉本さん優先?」
えっ?何?俺そんなことしたっけ?倉本を優先してた?あれれ?
倉本を優先?あれか?倉本の首根っこを掴んでたことか?赤石は俺に首根っこ掴まれたかったの?そんなことを望んでたの?
赤石が怒っている理由がよくわからないけど、首根っこを掴んだら元に戻ると思った俺は反対の席に座る赤石の後ろ首に手を伸ばす。
「えっ?ちょ、ちょっと……」
その声を聞いて、赤石はこれをやって欲しかったんだと確信する。
手を伸ばしてみたが、テーブルが邪魔で手が届きそうにない。だから、俺は立って彼女の後ろ首に手を伸ばす。
その時、テーブルの横に人の気配がいるのに気がつく。振り向くとそこには若い女性の店員さんがいた。その店員さんはすごく顔が赤い。
「そ、そのっ、ぴ、ピザなんですけど……(こ、このお客様、き、キスするつもりだ!)」
その店員の慌てようから誤解されていると思った俺は必死に弁解する。
「ち、違うんです。こ、これは、き、キスとかじゃないんです!彼女のく、首の後ろが気になっちゃって!」
「あっ、い、いえ、別に構いません!ぴ、ピザはここにお、お、置いときますので……。ご、ごゆっくりっ!」
店員はそそくさと店の裏へと戻る。弁解することができなかった俺は頭の中が真っ白になる。
赤石の首の後ろに手を回したままの俺と、それを見る倉本、そして顔を真っ赤にする赤石。
俺が赤石の顔を見ると赤石は俺から目をそらしている。その瞬間、我に返った俺は手を引っ込めて席に座る。
ドクンドクンドクンドクン。誰かの高鳴りが聞こえる気がした。多分俺のだと思う。
やらかしてしまった俺はもう立ち直れない。
俺が下を向いていると、隣に座っている倉本がちょんちょんと俺の肩を叩く。
「なんだよ」
「口を開けろ。目を閉じろ」
倉本のその声が怖かったので俺は言う通りにした。
その時、倉本から殺気が感じられた。それは目を閉じていても分かった。ヤバイと思った俺は目を開いた。
が、もう遅かった。倉本はピザの一切れを俺の口にぶち込む。自然と咳が出た。
そして、倉本は俺に向かってこう言った。
「黙って食え、冷めるぞ、ボケ!」
俺はその倉本の怖い顔を見て一瞬にして冷めてしまった。冷めないと死ぬと思ったから。
そんな中、一人だけまだ熱い人がいた。
ドクンドクン、ドクンドクン。まだ高鳴る心音が聞こえる。