次の回でepisode7はおしまいです!
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
一定のリズムで揺れる電車。それに合わせてつり革が左右に動く。電車の座席は蟻地獄のようで、座ってしまうと立つのが少し嫌になる。
今、俺も蟻地獄のような座席に座っている。別に柔らかいわけでもないし、気持ちいいというわけでもない。ただ、電車の揺れが少しだけ心地よい気がするのだ。
けど……なんかスゲェ体が熱い!いや、俺が熱いっていうよりも、隣が熱い。赤石が俺のことをガン見してるし、顔も
いや、こ、これは何も喋ってないから気まずいってだけだよね?別に赤石が俺にどうこう思ってるとかないよね。
そう、喋ってないから。それだけ。別に話せば元通りになるよ。うん。絶対。
「そ、そのさ。赤石って……」
ダメだ!話のネタが全然思いつかねー。何を話せばいいのやら。
俺が話のネタを考えている間にも時と電車は進んでいく。このまま駅まで何も話さないっていう手段もあるけど、それだと俺がこの場の空気に耐えられそうにない。
で、結局苦し紛れに選び出した話のネタは例の話。
「あのさ、三年の先輩たち、紅葉狩りに行ったじゃん?あれ、どこだと思う?」
話を作るだけでいい。話を作って少しでも自分の気を紛らわす。
「紅葉狩り……。今なら関東なんじゃないか?」
「そ、そうか。関東か……」
「……」
「……」
ダメだ。話が全然続かない。どうしよう。もっと話をつなげないといけないのに。そうしないと、二人で変なこと意識しちゃうから。
窓の外は景色がコロコロと移り変わる。それはつまり、一つの景色をずっと眺めることができないのと一緒。電車の中はずっと同じ光景。変わらぬ形、変わるのは乗り降りする人のみ。
揺れる電車。その振動が心も揺らす。
結局、赤石が俺に話をしてきた。赤石も話を出そうと頭の中で考えてた。この空気が嫌だから。楽しく話していたいから。
でも、話のネタを考えようとしても他の思いがそれを邪魔してくる。それはもっと根本的な何か。
赤石が話したのはその根本的なことについてだった。
「光牙はさ、他のみんなのことをどう思ってるの?」
俺がなるべく考えないようにしてたことを赤石は聞いてきた。考えたら今までの日常が虚構だって思ってしまうから。
でも、今なら考えることができた。自分の好きな日常は自分が勝手に塗り固めたキャンパスでしかないのだから。自分のキャンパスしかない部屋に閉じこもるより、自然を見たく思えてしまう。自分の好きなものとは別のものを見たくなってしまうのだ。好奇心である。
「白浜さんとか、倉本とか、夕日のこととか……、どう思ってるんだ?」
今、自分はどう思っているのだろうか。それは友達とかそんな簡単なことではなくて、もっと男女としての思い。
考えた。女性としてどう思ってるかって考えた。
けど、答えは同じだった。
「みんな、好き……じゃだめか?」
俺の曖昧な答え。赤石に俺は笑いかけた。
「そうやつだからな、お前は……」
「……ごめん」
「いや、いいんだ。別に……」
そこから話は途切れた。俺も赤石も何も話さなかった。けど、別に悪い雰囲気じゃなかった。なんか、あったかいように思えた。
赤石の降りる駅が来た。赤石は降りる時、俺に質問した。
「その、光牙の『好き』のリストに私は入っているか?」
赤石は気さくに笑う。
そんな気さくに笑われては、言う言葉も一つしかない。
「まぁな」
俺も笑い返した。