今回でepisode7、おしまいです、いや〜、長かった。
「で、あんたがこんな時間に何の用ですか?泉野先輩」
「いや、そのさ、心細すぎて……」
泉野はため息を吐く。電話越しにそのため息が聞こえる。まぁ、なんとなく泉野がため息を吐く理由は分かる。自業自得なのだが……。
「どうせあれでしょ?周りの人たちみんな色恋沙汰なのに、自分だけそういうのがないから必然と一人になるんでしょ?」
「そ、そうなんだよねぇ」
いつもなら「これが紳士的行為‼︎」なんて言っているが、今回ばかりはそんなことも言っている暇はないだろう。
清戸と北条の二人はくっついてそうだし、門川も蕗見と広路のアプローチに苦労してそうだし。
「で、一人残されて俺にすがってきたってわけか」
「それだけは言わないで……心折れそう」
周りがいちゃいちゃしている中、一人だけ「ああっ!これが紳士!ジェントルマン!」なんて言ってられないはず。多分、恋の邪魔をしないように、気を配っていたんだろう。それが疲労となっているはず。
だから、
「早く寝たほうがいいっすよ」
「待ってぇ!一人にしないで」
「俺もそろそろ寝たいんですけど」
「本当に寝るのかい?」
「寝ないけど」
「じゃぁ、僕と話していようよ」
どんだけしつこいんだよ!俺はベッドの下に隠してある『秘蔵・エ◯本』を見たいんだけど。この頃ストレスとか色々たまってるし……。
「ねぇ、柚子木くん聞いてる?」
「聞いてるよ!」
「よかったぁ、聞いてくれてる。……はぁ、観光がこんなにも辛いなんて初めてだよ」
「でも辛いのは目に見えてたんでしょ?」
「まぁね。でもさ、門川くんと清ちゃんの行き先が気にならないかい?」
「そりゃぁ、まぁ、気になるけど……」
好奇心。泉野の好奇心は今日の俺の好奇心と似ている。辛いとわかっているのに気になってしまう。知りたいから。
「そんなんならもっと近くに行けばいいと思いますけど」
「近く?」
「はい、清戸先輩と北条先輩の近くにいていいと思います」
「でも、そしたら二人の邪魔になっちゃうよ……」
泉野の声は弱い。自信のない声だ。
いつも二人が一緒にいたから大きな声を出せた。けど、二人がいなくなると泉野は一人になってしまう。一人だと胸張って大声を出せない人なんだ。
「邪魔じゃないと思いますよ。だって、いつも三人は一緒だったじゃないですか。だから、邪魔にはなりません。ただ、近くにいて見守ってあげて、二人が向き合った時は二人を押してキスさせてあげればいいんです。二人は恥ずかし照れながらも、それを隠すために怒ります。そしたら笑いながらこう言ってあげてください。
『お似合いだな、二人とも』って。それが紳士の務めです」
俺がそう言うと、泉野は数秒間何も言わなかった。何を思っていたのかは知らない。けど、彼は笑いながら「そうだね。そうしてみるよ」って言う。
「あっ、そういえばお土産、僕にも下さいね」
「ああ、うん。ちゃんとみんな分買ってるから。ちゃんと四方八方のお土産買い揃えているから」
「うぃ〜す」
俺は泉野からの電話を切ろうとしたが、あることを忘れているのに気がつく。
「あっ、そういえば門川先輩の三角関係はどうなってます?」
「ああ、それなんだけどさ。蕗見ちゃんも広路ちゃんも自分から行くようなタイプじゃないんだよ。それに、肝心の門川くんも積極的じゃないから。停滞ってところかな。今のところは」
俺は泉野から情報をもらうと電話を切った。そして、メールで門川宛に一言聞いてみた。
「蕗見先輩と広路先輩のどっちを選びますか?」って。けど、メールの返信は来なかった。