長いこと電車に揺られていた。ずっと電車に座っていたから、座席から立つ時はしんどかった。車内のアナウンスで起きたのだけれど、広路が起きなかったら俺たちはみんなで乗り過ごしてた。
電車から降り、駅の改札を出る。改札を出たら目の前に広がっていたのは山である。町の向こう側に赤と黄色に飾られた山がいくつもある。
「おっほぉ〜」
清戸はスマホで写真も撮る。なかなかいい写真が撮れたらしくて、ご満悦の様子。が、清戸が先に歩かなければ俺たちはどこへ行けばいいのかわからない。
「おい、お前が案内してくれないと俺たちはどこへ行けばいいのかわからないんだが」
「ああ、ごめんごめん。ついうっかり綺麗な紅葉に目を奪われて」
清戸はそう言うとみんなを旅館まで案内する。俺たちは清戸の案内について行く。
旅館の予約をとったのは清戸だ。親戚のおばさんが旅館をやってるらしい。清戸がそのおばさんに頼んで少しだけ安くしてもらった。この時期では破格の値段。一高校生の俺たちにとっては嬉しいことである。
この町はこの時期に活気付く。通の人たちには、紅葉狩りで人気があるらしい。それに、このあたりは温泉も出てるらしいし、最近ではテレビにも出てた。
が、さすがに平日。それほど思ったより人はいない。これぞ平日クオリティ。
駅から三分ほど歩いたところにバス停があった。清戸は申し訳なさそうな顔をして俺たちを見る。何となくだが、彼の言いたいことを察して、少しだけ殺意が湧いた。
「ごめん。これに乗るわ」
もちろん、そう言われた一同、みんなの視線が清戸に突き刺さる。これ以上交通費に金をかけたくないのに、まさかバスまで乗るとは。
が、ここまで来たら仕方がないのでバスに乗ることにした。清戸の言い分は、旅館の人たちにバスの送迎を頼んでいなかったというものである。
また、清戸自身、ここに来たのは数年ぶりらしい。なのであまり道順を覚えていないという。それもしょうがないので、旅館の名前をウェブで検索してルートを調べる。
「信用度を一気に失ったぞ」
「ええッ⁉︎それはツライ」
「いや、普通、お前の立場なら色々と調べてくるのだよ」
「まぁまぁ、落ち着いて。あっ、ほら、もうすぐ降りるから」
俺たちは清戸に言われた通り、バスを降りた。バスを降りて、清戸のうっすら残っている記憶を頼りに歩くこと約十分。ようやく旅館に着いた。
「よかった。ちゃんと着いた」
「本当、お前の記憶をあてにしない方がいいな。本当なら三分で着く距離だったのにな」
さすがの清戸も今回ばかりは何も言い返せない。「あはは」とただ笑うばかりである。
旅館はすごく大きな旅館であった。結構人気の旅館らしい。まぁ、平日なのでガラガラなのだとか。
俺たちが旅館に着くと女将さんらしき人が出てきた。清戸はその人を見ると、頭を下げて礼をする。
「あら、娯楽ちゃん。お久しぶり」
「お久しぶりです。おばさん」
「ずいぶんと大きくなったねぇ。お母さんとお父さんは元気?」
「はい。元気です」
女将さんは清戸と話した後、俺たちにも優しい笑顔で接客をする。
「この度は、清戸旅館にお越しいただき有難うございます」
深々と頭を下げるから、俺たちも深々と頭を下げてしまう。女将さんは俺たちに挨拶をした後、部屋に案内した。平日なので、ちょっとリッチな部屋が空いているらしく、俺たちはそこで泊まれるらしい。
つまり、俺たちは結構お得をしているのだ。ちょっとリッチな部屋に泊まって、料金は通常の部屋より安い。
心の中でガッツポーズである。