こんな奴でも青春したいっ‼︎   作:Gヘッド

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紫のアジサイ

あの頃の俺は日々がつまらなかった。目の前の景色は全てがモノクロ。全部が似たような景色で、色がついて見えるのは人の心のみ。

 

でも、生憎(あいにく)新しい学校には面白い奴は誰一人としていなかった。といっても、今まで面白い奴なんて見たことない。だから期待はしてなかった。つまらない毎日を過ごす。

 

清戸も泉野もつまらない奴だと思っていた。みんなから好かれているけど、他のみんなと思考は全然変わらない。(みにく)い人がいれば笑う。つまらない奴はみんなやること。

 

あと、広路なんかは毛嫌いしていた。いつも俺の近くにいる。邪魔でしかない。それに何となくあいつを見ているとイラついてきて仕方がない。

 

清戸と泉野はそれからもGHBに遊びに来た。その度に、ラブレターを持ってきて、ゴミ箱に捨てる。ゴミ箱に捨てたラブレターは灰となり土となり命を育む。思いを伝えるよりもそっちの方が断然いい使われ方をしてる。

 

北条と蕗見もよく遊びに来ていた。広路が呼び寄せていた。俺はそれが気に食わなかった。人は群れなければ何もできない。群れるものは面白くないのに、広路たち(クズ)は仲間同士で集まるのだ。不快である。

 

俺は群れたいわけじゃない。ただ、清戸と泉野が近くに寄ってくるだけ。それにつられてクラスのみんなが寄って来る。

 

それも俺にとって邪魔である。

 

放課後、一人で漫画を読んでいた。もちろん、今日もらったラブレターはゴミ箱にポイした。

 

季節は梅雨。雨が降っている。しかもドシャ降りの雨、傘をさすのがダルい。早く帰ろうと思っていたけど、外がドシャ降りだから、雨が弱まるまで部室で待つことにした。

 

GHBの部室は校舎裏の方に面している。裏の方はグラウンド。でも、今日は雨だから部活は中止。

 

けど、何人かの声が聞こえた。何人かの女子が騒いでいる声。

 

窓からそれを覗いた。

 

「あはは、マジウケる。びしょ濡れじゃん」

 

「地味子、濡れたらエロ」

 

その現場はイジメである。数人の女子が一人の女子をいじめている。数人の女子は傘をさし、いじめられている女の子は何もさしていない。

 

地味そうな女。

 

……あれって、広路か?

 

よく見るとそのいじめられている地味な女の子は広路である。広路は特に何も抵抗しないで、されるがままである。

 

その姿を見ていてイラついてきた。何も抵抗しない広路にイラついてきた。周りの女子にいじめられているなら、少しは抵抗しているところを見たかった。ただ、いじめられているところを見てもつまらないから。

 

「……チッ‼︎」

 

舌打ちを打った。部室に置いてあった透明のビニール傘を手に外へ出た。

 

外へ出たらイジメがもっとエスカレートしてた。広路をグジョグジョになった地面に叩きつける。

 

つまんない。

 

広路のバッグをは逆さにして物を落とす。

 

それもつまんない。

 

女子たちが広路の服を脱がせようとした。

 

それもつまんない。

 

つまんない。

 

つまんない。

 

つまんない。

 

つまんないから、いじめていた女子を蹴り飛ばした。後ろから女子を蹴った。女子は転んだ。傘は飛ばされて顔は泥まみれ。

 

「つまんねぇんだよ。んなことしても面白くない。つーか、今のお前の顔の方が百倍面白いな。(みじ)めで、滑稽(こっけい)なその顔が」

 

そう言われた女子は俺のことを睨む。だから俺も睨み返した。そして、その女子は「行こ」と仲間たちにそう呼びかけ、女子たちは校舎へと戻っていく。

 

俺は広路を見た。広路はずぶ濡れである。彼女は俺を見ていた。目を点にして、唖然(あぜん)と俺を見ていた。俺は彼女に傘を差し出した。彼女は俺に頭をぺこりと下げて、その傘を受け取る。

 

彼女は片手で傘をさしながら、落とされたバッグの中身を拾う。その姿を見てたらさらにイラついた。

 

「お前さ、何で抵抗しないの?」

 

その時、俺は初めて誰かのことを聞いた気がした。別に興味があったわけではない。でも、何で抵抗しないのかがわらかなかったから。理解できなかったから、俺は広路に質問をした。

 

「その、抵抗したら、誰かが不快に思うから……」

 

「は?何、それ」

 

「私が抵抗したら、みんなは嫌に思う。それに、みんなは笑顔……だから」

 

彼女の言葉が一瞬つまづいたように聞こえた。本当にそう思っているのか?

 

「それに……」

 

「あ?」

 

「みんな、笑顔だと、私は嬉しいから」

 

そう言いながら彼女は俺に笑顔を見せた。彼女の笑顔を見たのは初めてだった。いつも全然話さないつまらない女だと思っていた。けど、彼女の笑顔を見たとき、すごくせつない気持ちに思えた。初めて人に心動かされた気がした。

 

自分で作った虚偽の殻に(こも)る彼女を見てこう言ってしまった。

 

「つまんない、お前」

 

その言葉は虚偽である。

 

俺は彼女のバックの中身を拾った。濡れているので彼女もGHBの部室に来た。体操着に着替えるらしい。その頃にはもう雨は弱まっていた。

 

ドア越しに俺は広路にこう伝えた。

 

「俺、もう帰るから」

 

「あっ、うん」

 

俺は部室から下駄箱所のに向かった。その時、泣き声が聞こえたような気がした。

 

その日の帰り道、雨水(したた)るアジサイを目にした。そのアジサイは紫色でとても綺麗で、目を奪われた。

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