宿泊する部屋から出た俺。何となく、飲み物を買おうとして、自販機のところまで行く。同フロアの少し離れたところに自販機は置いてある。そこまで歩いてたら、蕗見と広路に出会った。二人も飲み物を買いに行くらしい。
「おい、これから清戸と泉野が紅葉狩りに行くって言い出すかもしれないから、準備だけしとけよ」
「え?今から?ちょっと疲れたんだけど」
「多分、北条も行きたいって言い出すぞ。広路、お前は行きたいか?」
「う、うん」
広路は特にモノを言わない。いつものように「うん」を言うだけ。元々、あまり主張しないっていうこともあるけど、GHBのみんなといる時以外は大体こんな感じ。
自販機のところに着いた。自販機は一つのフロアに一つだけ。俺は先にお金を入れて買いたい飲み物を買う。
「え〜っと、お茶っと」
お茶は一種類しかなかった。ポチッとボタンを押すと、下の受け取り口に押した飲み物が落ちてくる。俺は受け取り口からペットボトルを取り出した。
その時、広路が「あっ」と声を出した。広路の視線の先を見てみた。
お茶が売り切れになっていた。俺の買ったお茶が残りの一本だった。
「おい、広路。このお茶、やるよ。別に俺、ただの水で十分だし」
俺は広路の前にお茶を差し出す。けれど、広路は手の甲を胸につけ、首を横に振る。
「いや、いいよ。私は」
少しは甘えてもいいのに、広路はいつもこうである。手を差し伸べても手を握ってくれない。いつも自分より他人を優先して考える彼女の考えがすごく気にくわない。
それでいて、気になるのだ。
俺が広路の前にお茶を出していると、横から手が出てきた。蕗見である。彼女は俺のお茶を取った。
「じゃぁ、私がもらってもいい?」
「別に、いいけど。広路、いいか?」
広路は笑顔で首を縦に振る。その笑顔を見てすごく俺は胸が痛くなる。自分を主張しない彼女はいつも損をして、悲しくなるのは彼女のはずなのに。なのに、彼女はいつもその辛さを隠すように笑顔を俺に見せつける。
もう、二年も一緒にいるんだ。多分、学校の誰よりも。だから、彼女のその笑顔が偽物だってわかるし、彼女を助けてあげたいと思う。けど、今までで、一回も彼女を助けることができたと思った事はない。
それに比べて蕗見はそんな広路とは正反対である。辛い時は辛いと言うし、嬉しい時は嬉しいと言い、全力の笑顔を見せつける。その笑顔は本当に
結局、俺も広路もただの水を買った。
部屋に戻ると、清戸がリュックサックの中を整理している。どうやら紅葉狩りに行く準備をしているようだ。重いもの、持っていっても必要のないものを外している。
「紅葉狩りに行くのか?」
「行くだろ。紅葉狩りをしに来たんだ」
「明日は?」
「あしたは町の方でお買い物。ほら、ガリレオちゃんも準備して。ほら、行くよ」
……はぁ、まったく、