もうすぐで満月になりそうな月。その周りには星が散りばめられて、夜の空を作る。
そんな空が綺麗に見える風呂。露天風呂である。石の囲いの中に少しばかり濁る湯がある。その湯には、筋肉痛、神経痛、冷え性、疲労回復など色々な効果が期待できる!……らしい。
俺たち三人も湯の中に入る。足先を入れた時、空気との温度差からか、少しだけ熱く感じる。ゆっくりと足から湯の中に入る。最初はその湯が熱く感じるが、段々と慣れてきて、気持ちよく感じるのである。
タオルを頭に乗せて、大きな吐息を吐く。その吐息から、日々の疲労が抜けていく。体全体がポカポカしてきて、また大きな吐息を吐く。
「あぁ、きんもちぃ〜」
清戸はそう俺たちに話そうと思い声を出すが、俺と泉野は何も返答しなかった。別に気づいていなかったわけではない。ただ、少し清戸には黙っていてほしかった。清戸と話していると、疲れがどっと
日々の疲れが体から抜けて……。
「なぁなぁ、聞いてる?」
「うっせぇなぁ!少しは黙ってろ!こっちは疲れを癒しとんじゃ!」
「まぁ、まぁ、そう怒るな。今日は確かに災難だったけどさ、明日は何とかなるさ」
「いや、そこに対して怒ってねーし!怒ってるのお前だし!ってか、人の嫌な記憶をほじくり返さないでくんない」
「えっ?嘘?俺、ガリレオちゃんのことほじくり返しちゃった?」
俺の頭の中にはもうどう清戸を殺そうかというメニューがずらりと並ぶ。清戸への制裁を頭の中で考えていた。
俺がどの制裁を清戸に与えようか決めかねていた時、泉野が清戸の首の後ろに手刀を打つ。その手刀はクリーンヒットして、清戸は気絶する。
「うん。たまには黙らせないとね」
「いや、それジェントルマンのする行為じゃない……」
「大丈夫だよ。この
「えっ?じゃぁ、その他の武道の技も……?」
泉野はただ笑顔である。その泉野が清戸を掴んでいるのが、普通に怖い。清戸はジェントルマンとしてもアウトな奴だとしても、泉野のする行為が怖い。泉野には今後ケンカを売らないようにしようと思う。それと、ジェントルマンもキレさせる清戸、スゲェ。
で、清戸が退場して、俺と泉野の二人で秋と冬をまたいだ夜空を見る。寒い、けど温かい。二つの感覚を今、俺は感じている。
「ねぇ、何でさあの時、広路ちゃんには何も言えなかったの?」
「いきなりどストレートに聞いてくるな」
「あはは、ごめんごめん。でも、回りくどく言われるから傷つく時だってあるでしょ?」
「まぁね、回りくどい方がウザいからね」
俺は考えた。何で、あの時広路に何も言えなかったのか。あの時、俺は考えて動いていなかった。ただ、したいようにしていた。言いたいように言おうとした。そしたら、何も言えなかった。
なぜ、何も言えなかったのか。それは多分、怖かったのだ。
「蕗見のあの笑顔、見られないかもって思っちゃったのかも。それが怖かったのかもしれない」
「え?じゃぁ、まだ決めきれてないの?」
「かもな。いや、あの時、広路にちゃんと告白しようと思ったんだけどさ……、その、つい心の中にふっと現れたんだよ。蕗見の顔が、みんなの顔が」
六人の仲を引き裂いたのは俺である。今、一年になってやっとまた一緒になれた。それが嬉しかった。だから、もう二度とこの六人が離れてほしくない、そう切実に思っている。
あの頃、俺と蕗見が付き合ってしまったのが始まりで、どんどんと俺たちに
失くしたからこそ、その笑顔が本当に重要だと思えたんだ。GHBを変えたのはそれが理由である。一人になって辛かった。あの頃みたいにみんなで遊びたかった。だから、俺はあの教室でバカ騒ぎをしたいのだ。
結局、GHBは俺の願望でしかない。俺が全てを引き裂いて、ワガママで作ったのだ。
それでも、恋しかった。この六人の仲が。だから、俺は今、この状況を壊したくない。
「蕗見のことも考えた、みんなのことも考えてしまった。だから、俺はあの時、何も言い返せなかった……」