「もうさ、いっそのこと二人とも振っちゃえば?」
泉野が俺に提案する。が、その考えは予想のはるかに斜め上を行っていて、俺には頷くことができない。確かに、いっそ何かをするという考え方はこういう状況の時に妙案を与えるのだが、今回ばかりはそうもいかない。
もし、振ったとすると、二人はどう感じるのだろうか?俺が誰も選ばないという方法をとったと知って、二人は納得できるのか?それに、多分この手は俺の心に大きな傷を残す。
……嫌だ。それだけは嫌だわ。
「じゃぁ、先延ばしにするとか?」
「いや、先延ばしにはできん。だってずっと前から、二人に言い寄られてて……。先延ばしは無理だ」
「本当にGHBの部長?ヘタレすぎでしょ。それに、言い寄られた?広路さんと蕗見さんに?」
まぁ、GHBの部長という立場であるという所から言えば、俺は相当なヘタレだろう。実際、それについては自分でも分かっていた。腹を決めたはずなのに、言おうとした言葉が口から出てこない。
それに、言い寄られたと言っているが、少し勘違いをしやすい。言い寄られてはいるが、別に二人からグイグイとアピールされていたわけではない。むしろ、俺が全然グイグイ来ないから、仕方なく寄ってきたという感じ。
そう、つまり俺は男としてやっちゃいけないことをした。そう、言わせてしまっているのである。
「男気見せろよ」
「いや、そうなんだけどさ。どうも、緊張しちゃって……」
「初恋の人にラブレターを送る女子か!」
「まぁ、大体そんな感じ」
泉野は頭を悩ませる。俺の頭の中は色んなことでこんがらがっていて考えるどころの話ではない。
広路に言われたこと。蕗見に言われたこと。この時、俺は二人から『バカ』と言われた。その意味がわからない。何で、バカと言われたのか。わからないのに、心の中で、心の真ん中に居座っている。気になるのである。俺はバカと言われるようなことをしたか?
乙女の心は揺れ動く。男にとっての一生の問題である。多分、そんなん解けた人なんていやしないだろう。
「俺……間違っていたか」
「う〜ん。タイミングが悪いよね」
「そうか?」
「そうだよ。タイミングだよ。まぁ、確かに悪かったところもあるけれど、そんなに悪くは思えないようにも見えた」
「じゃぁ、何で俺は……?」
「さぁ、知らない。そこは北条ちゃんにでも聞いてみたら?」
北条か……。いや、でもあいつに聞いたら
「えっ?そんなに彼女に聞くのが嫌なの?」
「なんか、負けた気がする」
「あっ、それちょっとわかる気がする」
見た目ヤンキーってこともあって、そんなやつが相談相手なのは俺のプライド的にアウト。
……。
いや、諦めるか。