清戸と泉野は何処からかホワイトボードを持ち出してきた。そのホワイトボードを無断で勝手に部屋の中に入れて、ペンでホワイトボードに何かを書き始める。
『女の子イチコロドッキュンラブラブ大作戦』
清戸はその題名を指でさしながら俺に勝ち誇った笑みを見せつける。
「これさえあれば、
「んなわけあるかッ‼︎」
「えー、まだ話してもないのに」
「お前らが信用できん。まぁ、泉野ならともかく……」
俺は清戸をちらっと見る。清戸はそれに気づいて少し
「まぁ、とにかく説明するわ」
「拒否権は⁉︎」
「だからないって言ってるじゃん」
そんな……ヒドイ☆この私に人権はないのか?
「で、話を元に戻すけど、ガリレオちゃんは『二人が笑える』ことを目標にしてる。それがそもそもの間違いなんだよ」
「でも、言っておくが、目標の中には『自分が苦しまない』も目標に入っているぞ」
「あー、うん。そうだね。それも入れておこう」
泉野は俺の目標をホワイトボードに書き留める。自分のことを自分で見ていると少しだけ恥ずかしい思いがする。結局、俺は誰かに頼ってしまうのだということを実感するのだ。
「じゃぁ、ここで一つ気になることがあるんだけどさ、その『自分が苦しまない』っていうのは本当に守る気があるのか?」
「そりゃぁ、守る気あるさ……」
「そしたら、疑問が生じるんだよ」
「は?疑問?」
清戸はホワイトボードの真ん中にある文字を大きく書いた。その文字は『NOW』であった。
「おかしいんだよ。そしたらさ、何でガリレオちゃんはこの旅行に来たのか?だってさ、この旅行に来たら恋の進展があるのは間違いなしだ。さすがにそれは誰であっても見通せるはず。なのに、ガリレオちゃんはここに来た……それは、はたして本当に自分のためになっているのか?」
「いや、それは、俺が選んだんだ。みんなと、仲をまた取り戻せるかなって……」
また同じように戻りたい。またみんなでバカ騒ぎしたい。またみんなでアホになったみたいになりたい。恋は盲目というのならば、俺はその仲間という言葉に恋をした。今でもそれを追っている。
仲間、それはかけがえのない、人の、人生の宝である。
清戸は強くホワイトボードを叩いた。音が耳の中で木霊する。ホワイトボードはぐらりと揺れて倒れそうになった。
「甘ったれんな。そんな幻想論はクソ食らえだ!あの時の俺たちと今の俺たちは違うんだよ!お前だけがあの時の俺たちの後ろ姿を追っている。けど、他には誰もいねぇからな。周りを見てみろよ、お前だけ一人ぼっちだぞ」
そんなわけ、そんなわけがない。そう思いたかった。俺たちはみんなであの頃のバカな姿を追っているんだ。そう思いたかった。
思いたかった。
「お前のその理想のせいで、二人は苦労してんだろうよ。何であいつらが泣いてるか分かるか?あいつらはお前が過去しか見てねぇから泣いてんだよ!てめぇは今を見ろよ!あいつらを見てやれよ!お前みたいに好きな奴が眼中の外にいるって奴は告白する資格なんてねぇよ。恋する資格がねぇんだよ!」
そう、本当はわかっていた。俺がやっていることは押し付けに過ぎないと。大好きな奴のことを見ていない俺は恋する資格がないことぐらいとうに知っている。
だから言ったじゃん。言っているじゃないか。俺は
「そんなに過去に戻りたいんだったらタイムマシンでも何でも作りゃいい。そんなに現実と逃げたいんならだがの話だ。俺たちは高三だし、お前の理想には遠い存在だ。でも、時は過ぎるんだよ。それでもお前は受け入れられないか?」
俺は首を振った。それだけしかできそうになかった。