自分らしさって何だ?
俺が彼女にしてあげられることは何なんだ?俺だからこそのこと。俺だけにしかできないこと。
街を歩いて、お土産を買って、少しだけ時間ができた。俺は彼女と一緒にもう一度だけあの山を登る。
昨日と同じくらい、いやそれよりも綺麗に紅葉が待っているのである。青空に紅葉のいろいろも悪くないものである。
「その、まだ歩くの?」
後ろにいる彼女がそう聞いてくる。俺は「まだだ。もうちょっとだから頑張って」と言い返す。彼女は不安そうに小さく頷く。
会話はこれぐらいだった。昨日、あんなに言われてしまったし、話しづらい。それに、彼女の方も黙ってしまって話という話が出てこないのである。
まぁ、そりゃぁそうである。まず、告白するためになぜ山に登らせなければならないのかである。
まったく、あの二人の馬鹿げた計画のせいだ。
「計画って……」
俺は泉野から手渡された分厚い計画書らしきものの1ページ目を開けたらそこには大きな字でこう書いてあった。
『女の子をおとすには景色のいいところでロマンチックに‼︎』
「そう!1ページ目にも書いてある通り、山に登ってもらうよ!」
いや、なぜ山に登る?なぜ景色を求める?別によくね?心さえこもってれば……。
「ああああ‼︎今、ハルちゃん不満そうな顔したね?」
「ハルちゃんって呼ぶな!馴れ馴れしいわ!」
泉野は俺のツッコミを無視して、昨日彼が山の上から写真に収めた景色をホワイトボードに磁石で貼る。キレイな夜景である。日が落ちた頃ぐらいの空に、灯りの着いた街がキレイである。
が……。
「普通、紅葉も入れて撮れよ」
俺の厳しい指摘を泉野は知らんぷりして、勝手に話を先に進める。
「まぁ、ハルちゃんはキレイな景色をバックにしてプロポーズしてよ」
「待て、まだ結婚とかそこまで行ってない。ハードルを上げな、このバカが」
が、またもや泉野は俺の話を無視して、自分のバックの中からあるものを取り出した。そして、それを俺に渡す。
「はい」
なんか、物事を勝手に推し進められているような気がするのだが、それはしょうがない。……そう思いたいのだが。
俺は泉野からもらったものを見た。それはダイヤモンドの指輪である。もちろん、オモチャの指輪である。見た目はニセモノだと分かりにくいが、触ってみるとニセモノだとすぐわかる。
ニセモノのダイヤモンドはそれでも見た目分かりにくい。遠目から見たらホンモノの指輪である。透き通ったような青い色をしている。
そのダイヤモンドを泉野が渡したということは……。
「それを愛する人の左手の薬指にハメるんだ!」
「ゼッテェやらねぇからな‼︎」