俺と清戸と泉野の三人で決めた計画。その計画通りに事を進めるのはどうも俺には納得ができない。確かに、二人が考えた通り、愛する人をここに連れてくるのもいいだろう。そして、この指輪を渡せば、多分その人は喜んでくれる。その人の笑顔を見れた俺もハッピーになる。
けど、そしたら残った人はどうなるのか。俺と愛する人が手を繋いでいるところを黙って見ているのか。憂鬱な思いが
そんなことさせたくない。今まで俺の猶予期間中、何も俺に言わなかった。
蕗見の前で頭を下げる俺。深々と頭を下げて、空と隔へだたりがあるかのようである。蕗見はそんな俺を見て笑うのである。笑顔という仮面をつけて、俺に応答するのである。
「別に知ってるよ。ハルが広路さんを選ぶことくらい」
篭こもった声。仮面の笑顔が俺を見る。決して、素顔を見せようとはしないのである。
この計画には俺のことを第一に優先することが挙げられている。つまり、俺が望むことをしろということだ。
俺の望むことは一つしかない。それはもう俺を見ないでほしいのだ。
笑顔の仮面をつけたまま、俺を見ないでほしいのだ。偽善者きどりはやめてほしい。俺が求めているのはそんなんじゃないんだ。心と心を通じさせて、その嘘っぱちの笑顔をぶち壊して、本当の笑顔を見せてほしい。
なんで、みんなそんなに嘘の笑顔が好きなんだ?俺にはわからない。
だって、心を押し殺すことをして、何になる?そんな奴らが一人になった時の顔はあまりにも暗すぎて、俺はそれを受け止めるほどの器を持ってない。
そんなのしてたって、辛いだけじゃないか。
嫌な思いになるのは俺だけでいい。だから、笑ってほしいんだ。
頭を下げる俺に、蕗見は声をかけた。
「そのさ、じゃぁ、私も一つハルに告白しないといけないことがあるんだ」
「え?」
俺は頭を上げた。その時、彼女は笑顔で、そしてどこか切ない。後ろで手を組んで、一回空を向く。で、また俺の方を向いた。
「私、ハルのこと好きなのやめる」
その言葉は本心だったのだろうか?ただ、彼女の笑顔を見て、思い知らされた気がした。
ああ、彼女は俺と同じなんだ。俺と同じで、誰かのことしか考えてない。だから、自分の本当の気持ちを押しつぶしてでも、誰かを笑顔にしようとしているんだ。自分を大切にしないし、自分を一番だと思わない。
何でだろうか。それは多分、こんなことだろう。
あなたの笑顔が見たいから。あなたの幸せを見たいから。あなたが幸せになるから、私は幸せになるのです。
その時、清戸と泉野の言っていたことが分かったような気がした。何で、相手のことを考えてはダメなのか。
だって、二人とも偽善者だったら、二人の笑顔はいつまでも見れやしないから。