全部蕗見に言った。俺が決めたことを蕗見に告げて、ここで断ち切った。未練はないように、彼女には告げたつもりである。
蕗見は街を一望する。
「ここからの景色、すごくいいね」
けど、やっぱり気まずい。だから、何となくテキトーで曖昧な返事しか返すことができない。
「ここの街は、山々が綺麗な紅葉衣を
「いや、そんなことはないと思う。温泉だってあるし、冬とかはスキーとか?」
俺がちゃんと返答すると、蕗見は嬉しそうに笑った。何ものでもない、ただ白く純白な笑顔。
「じゃぁ、また今度、みんなでここに来よう」
首を傾げて振り向く姿は、山の紅葉にも負けないくらい綺麗で、でもどこか幼さがある。高校生、それは人によって感じ方が違う。まだ高校生、それとも、もう高校生。
子供と大人の境目に立っている俺たちは大人に向けて階段を上る。それでも、やっぱりあの時のバカな光景は目に焼き付いて離れない。
俺も蕗見に笑顔で答えた。これは他人のための笑顔ではない。自分が今、笑いたいから笑う笑顔。その笑顔にまた蕗見は笑顔を返すのである。そんな蕗見の、太陽のような笑顔、それがもう一度見れただけで悔いはない。
「また来よう。で、今度はもっとバカ騒ぎだ」
あの時が懐かしいのなら、あの時が羨ましいのなら、あの時が恋しいのなら、たまには子供に戻ろうではないか。バカになって、新しい記憶を、光景をこの目に焼き付けようではないか。
それに、みんなで会えるのなら何でも楽しいような気がする。
「うん」
俺たちは清戸と泉野を回収して、山を降りた。広路と北条と待ち合わせをする。
「いや、ビデオで撮ってたわ」
「お前らそのビデオ、さっさと消せ」
「いいじゃん。ハルが勇気出して告白したんだし」
「振られたお前は何でそのことにガツガツと踏み込める?」
「別に恥ずかしいことじゃないから。だって、私の予想は、ハルが何も言わずに終わるだったの。でも、堂々とハルは告白したじゃない」
俺、蕗見の中ではどんだけチキンなの?俺、そこまで小心者か?
「まぁ、このビデオは青き春はまだここに健在ってことの証明だよ」
「そうだよ。後世まで取っておくべき」
絶対にいや。
でも、こんなこともこんな歳の俺らだからこそできることなんだけれど。……まぁ、苦くて、それでも良き思い出としてはいいかな。
少し待っていると広路と北条が来た。どうやら喫茶店でお茶をしていたらしい。
「ごめんごめん。遅れた」
「いや、待ってない」
広路は俺と蕗見を見た。蕗見は笑顔で広路を見返した。広路は顔を少し
すると、蕗見はこんなことを言い出した。
「ねぇねぇ、今から三組に分かれて行動しない?」
その三組とは、言ってしまえば二人っきりということ。
蕗見は北条の腕をとって、みんなに言った。
「私は北条ちゃんとお土産買いに行くから〜」
その蕗見の考えに感づいた清戸と泉野は二人でそそくさと何処かへ行ってしまったのである。
つまり、俺は広路とお土産買いに行くのだ。二人っきりで……。