こんな奴でも青春したいっ‼︎   作:Gヘッド

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はい!Gヘッドです!

今回で、episode7.5もおしまいです。


最高のラブレター

俺はお前の前でも笑えてないのか。大好きなお前の前でも、俺は何で笑えないんだろうか。

 

お前の笑顔を見れる。それは俺の笑顔には何も関係してないと思わなかった。お前が笑うから俺も笑うと思ってた。雨降る日に、びしょ濡れで地べたに横たわるお前の作り物の笑顔を本気の笑顔に変えたら俺も笑えると思ってた。

 

結局、笑えたのはお前だけで俺は笑えはしなかった。

 

お前の笑顔は俺の笑顔ではない。ノットイコール。

 

「嬉しいつもりなんだけどな」

 

俺はお前と一緒にいれること、笑ってくれることが嬉しいことだと思ってる。

 

この氷のように固く、動かない顔はどうやったら朗らかに温かい笑顔になるのだろうか。

 

「私はハルちゃんが私のことを考えくれてるだけで嬉しいよ。一番大好きな人にそう思われたら嬉しいでしょ?」

 

「じゃぁ、俺はお前のこと好きじゃないってのか?」

 

広路は少し複雑な顔をしながら、首を横に振る。

 

「ハルちゃんが私の好きなんだってことは分かるよ。でも、私が一番じゃない。私はまだハルちゃんの一番になれてない」

 

「一番じゃない……」

 

「だって、ハルちゃんが恋してるのは、本当に好きなのは、あの夏の儚く消え去った六人の紡ぎ出した幻想だから。そのバカみたいに騒ぐ幻想が、まだハルちゃんの心から離れないんだって。みんな気づいてるよ」

 

六人で、GHBの部室で、くっつけた机の周りで、うるさくバカ騒ぎした俺たち。薄っすらとしか頭の中には残っていない記憶が、俺のまぶたの裏に焼き付いてとれない。

 

恋をした。それは一時の夏なのである。

 

みんな気づいていた。本当に俺が好きなのは、誰でもない。あの過去であると。清戸と泉野は現実から引き離そうとした。それは、もうみんながあの過去から冷めてしまったと教えるためである。

 

もう、あの過去を夢見るのは俺しかいない。それでも、俺はどうしてもあの過去に恋い焦がれる。

 

やっぱり、俺は捨てられないのだ。あの夏を愛してしまったのだから。誰よりも、何よりも、渇望する。淡い淡い夏の思い出が俺の喉を乾かし、その喉を潤すためにGHBを活動した。でも、やっぱり潤うのは一瞬だけなのである。

 

麻薬中毒のように俺はあの過去を夢見ている。

 

いけないとわかっている。今を壊すとわかっている。

 

でも、俺は、あの夏を捨てられないのである。

 

「あの過去が、俺にとって一番……だから。お前のことが、一番大好きだって言いたい。言いたい。けど、俺には言えないんだ……」

 

だって、俺、弱虫だから。幻想はいつまでも心に留めておきたいのである。

 

「いいよ。そう言ってもらえるだけで嬉しい」

 

「……えっ?」

 

「だって、本当のことを、話してくれたから。それだけで私、嬉しいんだ」

 

彼女は眩しい太陽のように笑った。その太陽は明るい、けど直視できた。眩しいけど、柔らかい光だった。

 

「それにさ、過去を振り返るのは悪いことなんかじゃないよ」

 

「でも、そしたら……俺はお前のこと……」

 

広路は顔を横に振る。彼女の髪がふわりと宙を舞った。

 

「だって、過去があるから、今があるんだ。ただ、ハルちゃんは未来(まえ)を向いてないだけ。だから、前を向こうよ」

 

広路はそう言うとリュックの中からあるものを俺に渡した。それは手紙であった。

 

「これは?」

 

「ラブレター」

 

ラブレター。あの時以来、一回ももらっていなかった。あの夏はラブレターをまるでゴミのように捨てていた。ラブレターにはただの文字しか書かれていない。でも、その文字の一個一個に愛が綴つづられているのである。一文字一文字に込められた想いを俺は読み取りもしなかった。それは俺が恋をしていなかったからその気持ちなんてわからないのである。

 

でも、今なら分かる。恋をしているから。どんな想いを持ってその人に告白したのか。俺はその想いを踏みにじっていたのである。最悪なことをした。

 

嬉しいな。ラブレターって。こんなにも心踊り、高揚させるものだとは思わなかった。今だからこそ分かる。

 

あの時、俺ができなかったことが、一つできた気がした。

 

「ふふっ」

 

広路が笑った。

 

「どうした?何か、変か?」

 

「いや、ただ、ハルちゃんが笑ったから」

 

「え?」

 

「嬉しそうに笑ってた」

 

その、広路の笑顔。ああ、守りたい。そう心で思ったのである。

 

広路はラブレターの中身を見ろと言ってきた。俺はラブレターの中身を見た。そしたら、シンプルにこう書いてあった。

 

『あなたのことが好きでした。付き合ってください』

 

広路は恥ずかしそうに笑うのである。俺は、その手紙を封の中に戻した。

 

「いいのかよ、まだお前、俺の一番じゃないのに」

 

「うん。いつか、一番になるつもりだから。ハルちゃんの目がハートになっちゃうくらいの一番に」

 

俺はそんな広路の言葉を聞いて、覚悟が決まったような気がした。俺は広路の前で頭を下げた。

 

「今はまだお前が一番じゃない。けど、それでも、いつかお前を一番にするから。そしたら、結婚しよう!」

 

「えっ⁉︎結婚?」

 

「あっ……すまん。間違えた……」

 

広路は俺の言い間違えにクスッと笑った。

 

「じゃぁ、子供は四人かな?」

 

「えっ⁉︎いや、それは言い間違えで……」

 

「有言実行は?」

 

「……はぁ、まぁ、努力します」

 

二人の間には笑顔と紅葉が舞い散る。その二つは地へと落ち、そしてそれが未来への道へと成る。

 

といっても、それはまた別の話。それはもっともっと未来の、愛の話。

 

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