朝、光に車で学校まで送ってもらっている。とてつもなく恥ずかしい。学校の目の前で車を降りた時、みんなから見られるのがめちゃくちゃ恥ずい!「この歳でママに送ってもらってんの〜?」とか言われたくない!
なんとなく、歩くのがだるいからというのが俺の考えた言い訳であり、本当は光が強制的に俺を車に乗せたのである。もちろん、俺は抵抗したけど、抵抗虚しく車に乗せられた。
まぁ確かに歩かなくていいし、ずっと寝ててもいいんだけれど、誰かにだけは会いたくない。
と思っていたら会ってしまうのが定番である。
車が学校の真ん前で止まり、俺が車から降りる。で、横を向いてみたら見慣れた顔の人がいた。
「よ、よう。ゆ、由美。朝、早いな!あははは」
「……」
あっ、ヤバイ。これオワッタ。
赤石は車から降りてくる俺を見ていたようで、すごく白い目で見てくる。そんな目で見られていたら死にたくなるわ。
「光牙……」
「はっ、はい!」
「まだ隣の人に迷惑をかけているのか?」
「えっ?隣の人?」
……俺は言われた瞬間、理解することができなかった。が、しかし、よくよく俺の記憶の引き出しを調べてみると、今と似たような状況が過去にもあったような気がした。あれは……確か……、九月の初めの方かな?
そういえば、光のことを隣の人って言ってたんだっけ?そろそろ本当のこと言わないとな。
俺が赤石に本当のことを言おうとした時、光は車の中からひょこっと顔を出した。
「こーがー、行ってらっしゃーい……って誰その子?光牙の彼女?かわいー」
光はつくづくめんどくさい時にめんどくさいことを引き起こす。光がそう言うと、赤石はボッと顔を真っ赤にする。
「ひぇっ⁉︎わ、私は、こ、光牙くんのお、お友達ですよ」
「そうだよ。由美が俺の彼女な訳ねぇだろ」
「いや、でも下の名前で呼び合ってんじゃん」
「友達としてな。なっ?そうだろ?」
「えっ?ああ……うん」
赤石は元気のない返事をする。そんな赤石を見て光はニタニタと変態的な笑みをこぼす。
「つーか、さっさと会社に行ってくれ」
「はいはーい、わかりましたよー。桜木光‼︎可愛い我が子のために今日も精一杯頑張ります‼︎」
「ババァがしても可愛さは微塵もないから。大丈夫だよ。安心してゴートゥー」
「ラジャー‼︎」
光はまるでお酒にでも酔った人みたいな返答をする。といっても、別におかしいことはない。いつもあんな感じで、俺はあんなバカみたいな光しか知らない。
職場で働いている光を見たことは、コンテスト以外では一回もない。だから、変な親だと見てしまう。
赤石は車の背中を見て、こう俺に聞いた。
「あの人って光牙のお母さんなの?」
「そうですよ。お恥ずかしながらあれが私の母です」
「苗字が違ったけど……」
「離婚したからね。まぁ、ある意味泥沼な離婚したよ」
ある意味泥沼である。二人ともベタベタしてブチューばっかしてて、何にも働かないから仕方なく離婚した。愛しすぎて、逆に離婚したっていう稀すぎるパターン。
「……なんか、大変そうね」
「分かってくれたか。ありがとう」
ここに、俺の変な悲しみを分かってくれる人が一人増えた。まぁ、今の所ココと赤石だけであるが。