冬の季節になって、風は凍てつく氷のように体にまとわりついてくる。手や耳のような体の先はかじかんで、ただただ冷たい。それが窓越しでも寒い空気は寒い。部屋は自然の冷蔵庫のように寒く、乾いている。鼻から息を吸うと冷たい感覚が鼻を襲う。
寒いGHBの部室。椅子に座るけれど、その椅子も最初は冬の空気に触れていて座る時はひやっとする。かじかんで感覚が薄れた手を、人肌温かいほっぺにつけて頬杖をつく。
俺と白浜は一番最初にGHBの部室に着いた。倉本は宿題を出してないとかなんとかの理由で遅くなるか、来れないか。まぁ、GHBはそこらへん緩いし、いたい日にいれればそれでいい。
が、この頃はもう門川も広路も全然来ない。いや、来ないというよりも来れないのである。あと、大学入試まで100日も切ってる。流石に来れるわけがない。確か、最後に会ったのは先週だろうか?それぐらいである。俺たちができることは、迷惑にならないように応援することしかないのだから。
五条と神崎はいつものようにふざけながらこの部室まで来ているんだろう。あの二人のことだ。またどこかで道草でもしているのではないか。
……いや、それは偏見か?もうすぐ期末試験もある。あと2日。もしかしたら勉強しているのかもしれない。
俺たち二人だけの部室。外から部活の鼓舞の声や、話し声が聞こえる。それに対して、中は静かだ。
「寂しいですね」
白浜はそう俺に言うのだ。けど、彼女の顔はなんら変わらずいつもの笑顔である。
「みんな、大人になっていくな。今、三年は入試の猛勉強中で、二年は来年に入試がある。もう集まれるのは数回かもな」
「そうですね」
一定の笑顔の量を絶やさない。いつまでも、ずっと笑顔の白浜。その笑顔は虚構であるかのようにも見えてくる。
まだ俺たち二人は入学した時から変わらない。変わらずにここに居続ける。周りの奴らはどんどん変わっていって、それが俺たちにとっては寂しくも思える。季節が変わり行く様に、みんな変わる。
そんな中、俺たちは取り残されてしまったのだろうか?
俺は天使のように柔らかい笑顔の白浜にこう言う。
「お前、変わんないよな。いつも、笑顔だ」
白浜は笑いながら「そうですか?」と返答する。
入学当初、俺は白浜の笑顔が好きだった。いや、というより白浜という人が好きだった。いつもみんなのムードメーカーのようであって、みんなに色々と話しかけて、彼女が通った後に咲くのは笑顔の花。
そう思っていた。
だけど、ある日気づいた。この好きは恋ではないと。俺は白浜のことが好きである。けれど、この好きはきっと恋愛とかの好きじゃなくて、友達としてなんだ。
白浜の笑顔はいつになっても絶えないけれど、そんな彼女が不気味でもある。
笑顔を壊さないのではない。笑顔が壊れないのである。まるで色々な方向から鉄棒が刺さっていてその鉄棒が顔を変えるのを許さない。変えようとすると激痛を伴う。
白浜は笑いながらも、何かを抱きながらこう言った。
「笑顔は、絶やしてはならないんです。笑顔を絶やしてしまったら、もう笑えなくなるかもしれないから……」
血だらけの笑顔がそこにある。