電車の中に入っても清戸は清戸だった。何を考えているかわからないけれど、楽しいことが彼の目の前にはいつもあるのだろう。大抵、俺たちの目の前だとニタニタと、言ってしまえば不謹慎に笑っている。俺たちがどのように思っているかを、清戸は知っているのだろうか?
少し揺れる電車の中でそう思った。
車内は平日にしては空いている。車窓からは色々な街の景観が見えるが、鉄柱やらコンクリートの壁やらがその景観の邪魔をする。学校のカバンを足の間に置き、清戸の隣に座っている。
そう言えば、墓参りは久しぶりだな。この頃、色々と多忙で他の仕事などに振り回されていた。だから、墓参りに行く余裕が一切なかった。確か、俺が最後に行ったのが9月だったような気がする。
俺は電車内で、色々と今ぶち当たっているGHBの問題の事を清戸に愚痴っていた。もちろん、その中には白浜の事もある。清戸は俺の肩に手を置いた。
「まぁ、人は誰しも変わっていくからね」
変わっていく。今、白浜は変わっているのだろうか?俺の目には彼女は一切変わっていないように見えるのである。無邪気な白い笑顔を見せて、いつも献身的なのにそれがどこか危うさも持っている。入学当初から彼女はずっと笑顔で通してきた。それは逆に言えば、笑顔でしか通せないということではないのか?
「センパイは、なんでそんなに笑えるんですか?」
素朴な疑問だった。いつも笑顔である。無邪気ではないし献身的でもない、少しいやらしい笑顔だけど、白浜とはどこか似ているところがあるように感じられる。そして、笑顔だけで通したわけでもない。他のものもあって、今彼がいる。言いたくはないけれど、目の前にいる清戸は立派だ。俺が悔しいと思うほど、清戸は立派なのである。
清戸と白浜は似ているのに、正反対だ。今の白浜は多分、醜い姿を
清戸はそれを白浜を見たときから思っていた。だけど、あえて何も言わなかった。
清戸はにたりといやらしい笑みを浮かべる。俺を見下すように。でも、どこか慈愛の手も差し伸べているように。
「さぁねぇ〜。わかんないなぁ〜」
清戸は返答を
清戸は誰かに簡単に答えを教えようともしない。助けようともしない。ただ見ているのである。それは、まだその人の自分の力でなんとかできる時である。俺が抱えている問題も、まだ自分の力だけでなんとかできると、清戸は考えている。
俺は落胆した。清戸について行けば、何かいいアドバイスをもらえるんじゃないかと期待していたのだが、得たのは清戸の笑顔の記憶だけ。清戸の笑顔はもう何回も見たから、もういらないのに。
それでも俺は、記憶の中に清戸の笑顔を刻み入れた。