「……で、今回はどうだったの?」
「どうだったのって、何をが?」
「何って、そりゃぁ、試験でしょ」
「え?」
「期末のこと。期末試験」
「うっ……!」
聞かれたくないことを聞かれてしまった。なるべく考えないように黙っていたつもりだったのだが。
「舞ちゃんから聞いたよ。今週テストあったんでしょ?」
「いや、まぁ……はい」
彼女はニタニタと人の不幸話を期待するかのような笑みで俺を見る。そんな笑みで見られたくないのだが、残念ながら今回はその不幸話がたくさんある。
「赤点何個?」
「しゃんしゃい‼︎」
俺はガキみたいな言葉遣いをしながら、人差し指、中指、薬指を立てた。俺がふざけると、湯島にドン引きされた。なんか、すごく悲しくなってくる。せめて笑ってほしかったのだが、湯島がチョイスしたリアクションは結構キツイ。
「まぁ、柚子木が3つって言うなら、5つかな?」
えっ?何それ?ヒドくない?俺ってお前の中でどれだけバカな奴に仕立てあげられているの?俺、さすがにそこまでバカじゃないから!赤点、3個までしか取ったことないから!
……ごめん。嘘。4個だわ。
「ねぇねぇ、どの教科が難しかった?数学?数学でしょ?」
「ちっげぇーよ!数学は意外とよかったわ!」
「じゃぁ、英語?」
「『じゃぁ』って何だよ!まるで、俺が出来ないかのように言いやがって!……まぁ、出来なかったけどさ……」
俺が今回の試験を振り返って、傷に塩を塗っているかのように思えた。それで、意気消沈している俺の姿を見て、湯島はケタケタと笑う。
はぁ、何で俺、こんな奴に笑われてんだろ。
「つーか、お前はズルすぎるわ!試験受けてねぇだろ?」
「ざまぁみろ!私は今、お病気中でベッドの上で眠ってるだけで点もらえるから」
チッキッショー‼︎湯島め!病気であるのに、何でこんなに無駄に元気有り余ってんだよ!今日のこいつ、めちゃくちゃウゼェ!
……まぁ、少し不謹慎だったかな。
俺は少し言い過ぎたと思いながら湯島を見た。
「バーカ!バーカ!柚子木のバーカ!赤点ご〜このバーカ!」
……。
……地獄に堕ちてしまえ。
俺の言っていることが不謹慎であったとしても、彼女も不謹慎なことを連発しているので、まぁいいだろう。
っていうか、元気有り余ってるって面倒くせぇな。前までの湯島ならこんなことは言わないのに、こんなバカみたいに『バカ』という言葉を連呼してんのはその影響だろう。なんか、段々と北瀬に似てきたな。これは、北瀬に会えていないという禁断症状か?
「そーいや、湯島。お前って勉強どうしてんの?」
俺がそう聞くと、湯島はベッドの横にある袋からノートを取り出した。そして、そのノートを開いて見せた。ノートには授業の内容らしき文章がキレイに分かりやすく書かれている。
「へぇ、これって誰の?」
「ああ、これは委員長の。キレイで分かりやすいでしょ?」
「赤石のか。確かにあいつ、字キレイだしな。……あれっ?でも、よくあいつここに来れたな。生徒会で忙しいんじゃ……」
「舞ちゃんが持って来てくれたの。委員長、生徒会で忙しいから、舞ちゃんがここに来るついでにこれも持って来てくれたんだ」
「へぇ〜」
「すごいよね。よく書けてるよね」
「……う、うん」
「……どうしたの?」
「えっ?いや、何でもないよ……」
そうさ、何でもない。目の前にある文章が理解できないなんてことは、ありゃしない。
……授業中、寝てたから全然わかんないや。ちゃんと書けているかさえもわからない。
「でも、そのノートだけで勉強出来てんの?」
俺がそう聞くと、彼女は曖昧な返事をした。やっぱり、ちゃんと勉強出来ていないらしい。
「ほかさ、誰か頼めば?白浜以外にも」
「う〜ん。そうだよねー。でも、教えてくれそうな人、いる?」
「大丈夫大丈夫。いるよ。……あっ、俺以外の人ね」
俺は少し考えてみた。赤石は生徒会で忙しいし、小深は出来る教科に偏りがある。倉本は俺と同じくらいの知能でまず論外。
……あれ?いなくね?出来る人、いなくね?
「あっ、いるわ。一人だけいるわ。お前に勉強を教えられそうな人」
「いる?誰?」
「……北瀬、とかどう?」