指定された部屋に入った。7人もいるので、少し大きめの部屋を指定した。俺たちは自分で選んだドリンクを持って座席に座る。
着いて早速、北瀬はテレビの前にあるタッチパネルを持ってくる。パネルを操作して、自分の歌いたい曲を予約する。北瀬は我先にと、曲を予約した。
北瀬は自分で予約した曲を歌い出す。まったく、今日は白浜のお誕生会なのだから、普通最初は白浜であろうに。
「おい、白浜。いいのか?このバカに歌わせても」
俺はそう聞いたが、白浜はやっぱり白浜で、北瀬の行動も良しとする。白浜にとって、自分に起こることは何でも良しとしてしまうことは多分自分の価値をダメだと再確認にしているんだと思う。
つまり、白浜は自分が嫌なことをされても、ほぼ断ったり、拒んだり、非難したりはしない。そうすることによって、自分の存在価値を下げているのだろう。
それは彼女自身が望んでいることであったりもする。彼女は自分が生きてしまっている人だと言った。まるで、自分は死ぬはずであったとも言うように。
自らの家族を目の前で失って、それでも生きているのを彼女は否定的に捉えている。だから、彼女は自分の価値を下げているのだ。
自分の価値を下げて、自分は生きてしまっている人だと再確認して、その上でまた自分を下げる。負の連鎖が彼女に付きまとっている。あの天使のような笑顔は表面上の作り笑い。
本当に彼女は自分が生きてしまった人だと思っているのだろうか。
北瀬が歌っている間に、俺たちは歌う順番を決めた。白浜、小深、赤石、俺である。しかし、倉本はなぜか参加しないと言うのである。
「おい、倉本。お前、何で歌わねぇんだよ?」
「ん?いや、別に歌いたくないというわけじゃない。ただ、ソロで歌うのが嫌なだけだ」
「ソロが嫌なのか?」
俺がそう聞くと、彼女は首を縦に振る。
「別にみんなのこととか気にしなくていいよ。お前の歌いたいように歌ってもいいから」
すると倉本は「何を言っている?」とでも言いたげな顔を返す。
「お前、この前のカラオケを忘れたのか?」
「えっ?この前?……あっ!そう言えば……」
この前のカラオケ。9月上旬にいつもとは違う少し異色なメンバーでカラオケに行った。その時、倉本は難しい曲を歌いながらもいい点数を取ったが、彼女は自分が本当に上手いのか疑問だった。
「どうせ機械だろう?テキトーに点数をつけているんだから、いい点数でも下手かもしれないし……」
「……いや、こういうのはみんなで楽しむんだよ。ほら、歌えよ」
俺が彼女の背中を押す。まぁ、音痴な俺からしてみれば彼女は結構上手い方だと思う。
……音痴な俺からしてみればね!
俺の番がきた。俺はマイクをもらうが、そのマイクを倉本に渡した。
「ほら、歌えって」
「いや……でも……」
「ほら、俺とかお前の歌声、久しぶりに聴きたいって思ってるから……」
「ほ、本当なのか?……う〜ん」
倉本がたじたじしていると、白浜も倉本の背中を押す。
「歌いましょう!私、聞いてみたいです」
その彼女の言葉が決定的だった。本日の主役にそう言われたのならば断れない。彼女はマイクを取った。
選んだ曲はバラード。優しい曲である。
彼女は大きく息を吸い、そして吐く。マイクを少し離して、口に対して垂直にする。
歌いだした。優しい声が部屋に響く。
なんだ、上手いじゃん。
彼女はそのまま歌い切り、俺にマイクを渡した。
「どうだった?」
「……やっぱり、あんまりこういうのは慣れないな」
「そう言っておきながらも高得点だが……?」
「まぁ、どうせ機械だ。柚子木もいい点数を取れるんじゃないか?」
「そうだな」
俺はそう言って彼女からマイクを取る。
さぁ、歌おうか!
そう意気込んだ。
が、結果67点の惨敗であった。