やばいですね。だんだんと暗くなりましたね。
まぁ、後で明るくしときます。
「……いないな」
今、俺たちはある迷子の男の子の母親を探している。しかし、男の子の母親は一向に見当たる気配がない。
相談センターに行ってみたが母親らしき人はいないし、相談も来てないらしい。迷子のお知らせの放送もない。
男の子にどこではぐれたのかと聞くが分からないとしか答えてくれない。
考えられるのは一つだけ……。しかし、この考えはこの子には言えない。
それに倉本に言えば、倉本の心を傷つけてしまうだろう。
だって、この子はもう生きてないのだから……。
この子は多分さまよっていたのだろう。まだ、幼いので思い入れのあるこの博物館内で、たった一人で。
最初、この男の子は人が大勢いるところに一人で泣いていた。なのに誰もこの子を泣き止まそうとはしない。それは誰も見えていないから。
しかし、この子はまだ自分が死んだ事に気付いていない。
流石に俺も鬼ではない。お前は死んでいるからもうお母さんとは会えないなどという事は言わない。男の子の成仏の条件は多分母親に会う事。でも、この博物館にいないんじゃ……。
無理かもしれない。
嫌な言葉が俺の脳裏をよぎる。
もちろんこんな幼い子をまた一人ぼっちにさせるのは嫌だ。
やれるだけの事はやるつもりだ。
男の子は倉本と楽しそうに喋っていた。
だからこそ胸が痛む。どうすればいいのか。俺は何も出来ないのか。この子をまた一人ぼっちにしてしまうのか。
真実を知らない倉本にも本当の事を言いたい。でも、倉本に言えば、彼女は自分の足で男の子の母親を見つけに行くだろう。彼女は身を粉にしてまででも。
二人はまるで本当の家族、兄弟のように楽しく話していた。
「おい、愚民よ。この子が二階に行きたいそうだ」
「ああ、まぁいいけど……」
「どうした? 居場所が分かったのか? 」
「いや、そうじゃない」
「そうか。よし! じゃあ行くぞ! 坊や! 」
「うん‼︎ おねぇちゃんといっしょー‼︎ 」
そして、二人、いや、一人と一体について行った俺は二階に着いた。
男の子は二階に着くや否やはしゃぎながら走り出した。
倉本は男の子を追いかけて行く。
「おにごっこ〜! 」
「あ、おい! 走るな! 危ないぞ! 」
俺はそんな二人を歩きながら追った。歩きながら……。
「みてみて! おねぇちゃん! おにぃちゃん! ここのへやすずしいよー! 」
男の子が入って行ったそこは”温度”に関係する物が展示されているスペースであった。
確かに入ってみるととても涼しかった。氷についてや、温度と湿度の関係などが展示してあった。それ以外にも子供にも分かりやすいように触れる事が出来る模型なども色々と。
「ねぇねぇ! おねぇちゃん! おにぃちゃん! これみてよ! 」
男の子が俺たちを呼んだ。そこにあったのは水は温度によって状態が変化するという事についての展示品。ボタンを押すと目の前の図が光って説明してくれるというタイプ。子供にも分かる物である。
「わぁ‼︎ すごいね! みずっておんどでかたちがかわるんだね‼︎ 」
男の子はキラキラ目を光らせながらその図を見ていた。まるで新しい玩具を手に入れた時のような目で、ずっと見ていた。
すると倉本は男の子にこう聞いた。
「どこが凄いの? 」
「うんとね、こおりってあったかくなればくうきになるところ」
「じゃあ、冷たくなったら? 」
「おねぇちゃんみたいなこおりになる! 」
「えっ? おねぇちゃんは氷? 」
「うん‼︎ やさしいけど、こわい! だっておにぃちゃんにはこわいもん‼︎ 」
よし! よくぞ言ってくれた。もっと言ってやれ!
俺がそう思っていると倉本は俺の事をチッと言いながら睨んできた。
「あはは、おねぇちゃんこわいー! 」
「ええ? これは、その、あ、愛情表現だよ」
何が愛情表現じゃ! それのどこに愛情表現があるんだ?
「おにぃちゃんとおねぇちゃんはらぶらぶ?」
「えっ? あ、うん。ラブラブだよ! 」
な訳ないだろ! 嘘をつくな!
「なんかおねぇちゃんとおにぃちゃんって、ふうふみたいだねぇー! 」
「ヤダよ! あんな奴と夫婦? 絶対に嫌! 」
それは俺も同感。俺も絶対に嫌です!
「ねぇ、おねぇちゃん! 」
「なあに? 」
「あのさ、おかあさんって、ぼくをうんだひとのことをいうの? 」
「えっ? 」
何を言っているんだ?この子は……。
〜その頃の他の四人は〜
「……」
「…………」
「………………」
「……あれ? そう言えば柚子木君と倉本さんがいなくないですか?」
「ああ、そう言えば完璧忘れてたわ」
忘れられていた。
何もないっす!