自分って何なんだろう。白浜は自分が何なのか分からないと言う。そんな白浜をおかしな奴だと見ている俺は、自分が何なのかなんて分かっているのだろうか。彼女に自分という存在定義を説明できるのだろうか。
いや、無理だ。例え、彼女が分かったとしても、俺のことを一切知らない人に俺のことをどんなに説明しても全てを分かるわけがない。
俺だって自分が何なのか分かんない。自分がどうできて、どうしたいのかだって分からない。
自分らしさを持っているのが自分?なら、自分らしさって何だ?
白浜に問いかけるはずの問いが俺に迫る。俺が彼女に聞くはずなのに、ブーメランのように俺のところに戻ってきてしまった。
そのブーメランを俺は答えることができなかった。彼女に問いかけるはずの答えが出て来なかった。なんて弱い男なのだろうか。
ただ、分かった事もある。
「俺だって分かんねぇよ。でもさ、分かんないからって言って、自分を模索せずに決めつけるのは間違いなんじゃねーか?」
答えが分かんなかった俺なりの答えだった。分かんなくてもいい。っていうか、分かるはずがないのである。だって、自分を見つけてしまったら、自分はもう幾様にも変わらない。どんなものにも順応することのできない人になる。
変わりゆく自分を分かるわけなんてない。分かるわけないのに分かろうとする。それが人生なんだ。変わりゆく自分を模索する旅が人生で、人生を模索してその先にあるのは自分が決まる
だから、今、自分を決めつけてはいけない。自分の存在定義を勝手に決め付けたその時、その人の人生はおしまいなのだから。
「俺たちはまだ16歳だ。だから、まだ自分を決めつける時じゃない。今、お前が自分をクズだと思っていたとしても、旅をしてれば少しは変わるはずさ。……まぁ、なんつーか、そう悲観すんなよ」
俺はまだ若い。若いから、そんな偉そうなことを語っちゃいけないのかもしんない。だけど、いつかは潜る門。だから、若いなりに考えた。
「……じゃぁ、柚子木くんは自分が好きですか?」
「は?」
「柚子木くんは自分のことが好きなんですか?」
「まぁ、好きだよ。そうじゃねぇと、色々とやっていけないし……」
「どういうところが好きですか?」
白浜にそう質問されて、俺は言葉詰まった。初めてであった。そんなことを質問されたこともないし、ましてや自分がそんなことを考えたこともない。
俺は俺のどこを好きなんだろう。
俺は思い出せる記憶全てを掘り起こしてあれこれと探してみたが、どうもいい記憶が見当たらない。あるとすれば、少し人よりも運動神経がいいということぐらいだろう。
しかし、それ以外には何にもなかった。だから、俺は白浜に何にもないと言おうとした時、ふと考えさせられる事があった。
その考えが俺の今までの考えを改めさせた。
「俺は……俺、全部が好きだわ」