ようやくepisode.8が終わります。
「おい、帰るぞ」
倉本が俺たちを引きずってでも家に戻ろうとする。少し焦りの色みたいなものが彼女には見えた。何をそんなに焦っているのだろうか。
「なぁ、倉本」
俺は少し大きな声で倉本にあることを聞いた。
「みんな白浜のこと心配してたか?」
「はぁ?何を言っている?みんな心配しているに決まっているだろう。友達なんだから」
倉本の声は白浜に充分届いていた。俺は白浜の肩にグイグイと肘を入れる。
「だってよ」
当たり前のことに何故彼女は気づかなかったのか。それはもう今の彼女では分からない。今の彼女も分からず、そして前の彼女もそれは分からない。
当たり前を見るという単純なことが彼女はできなかった。目の前を見ずに、何処かもっと良い所を見ようとしていた。結果、彼女は崖に落ちそうになっていた。
みんなが良くなるようにとばかり考えて、自分のことを考えていなかった。というより、自虐していた。
もしあのまま上を見上げて、前を見ていなかったら、本当に奈落の穴に真っ逆さまである。
白浜はその当たり前が目の前にあると気づいた。そして、ボソッと呟いた。
「ごめんなさい。心配かけてごめんなさい」
彼女なりに言葉を探したんだろう。で、言葉を探したけれど、やっぱり一番いい言葉は素直に謝る言葉だった。
「謝んなよ。別にお前が悪いってわけじゃねぇんだろ?」
彼女は悪くない。だけど、他の人も悪くはない。悪い人なんて最初からいないのだ。ただ、彼女は悪い人を作ろうとして、自らを悪い人に仕立て上げた。
彼女には色々な理由が重なって、ああいう風な人になってしまった。
ただ、俺には少しだけそんな彼女にも許せないことがある。
「でも、ご両親には謝っておけよ」
別に俺たちに謝られたってどうってことない。まだ知り合ってから一年も一緒にいない。だけど、ご両親とは十年ぐらいずっと迷惑をかけてきた。だから、謝る必要がある。
「はい」
笑顔で彼女は答えた。そう元気よく「はい」と言えるのは彼女らしいところでもあるだろう。俺たちぐらいの歳の人は、そんな簡単に親にごめんなさいなんて言うのが難しい。心の奥のムカムカとした気持ちが、わざとじゃないのに何故か親に投げつける。だけど、彼女はそんなことしない。
まぁ、そんな性格だから彼女は考えを改めようと決めた。人の言うことをすぐに実行することのできる彼女だからである。少なくとも、俺は出来ない。俺の中の反抗心が、他人に従順になることを拒むからである。
「あっ、その、二人とも。ちょといいですか?」
突然白浜が俺と倉本を止める。俺と倉本は白浜の方を振り返ると、彼女は頭を下げていた。
「心配かけて、すいませんでした」
「いや、舞ちゃん。謝らなくっていいよ。ほら、さっきのでもう私たちは許してるから」
二度目の謝罪。それをしなくていいと言う倉本は白浜の肩に手を置くが、白浜は頭を上げようとはしない。
「さっきのは友達としてです!」
「じゃぁ、今のは何だよ」
「仲間としてです。GHBの仲間として、謝りたいんです」
彼女はこうなると少ししつこい。よく言えば律儀なのだが、それが少しめんどくさくなる時もある。今みたいに。
「本当にごめんなさい」
深々と頭を下げる。彼女の長い髪がふわりと上下に揺れる。俺はそんな彼女を見て、少しだけ滑稽だなと思わされた。
「おい、白浜。もう謝るな」
「でも……、私がしてきたことは……」
「いや、してきたこととか、もうそんなんどうでもいいから。これから先、そういうことを起こさないように努力してくれれば俺はそれで満足だから」
「私も」
俺と倉本の意見が珍しく合った。そんな俺と倉本を見て、 彼女は涙ぐみながら嬉しそうな笑顔をする。
「ほら、帰るぞ。泣き虫」
俺と倉本は白浜を挟んで彼女の家へと戻っていった。
今回も結構ノープランな部分があったため、迷走気味でしたが、何とか終わりました。