空は暗く、街の灯りが路を照らす。吐く息は白くなり、手は氷のように冷たくなってしまい感覚がなくなる。それでも今日は多くの人が夜の街を歩いている。
今日は大晦日。あと10分ほどで今年は終わり、そしてあと10分ほどで新年明けましてである。さすがにこの夜中に子供は街を歩いてはいなかったが、俺ぐらいの男子女子はちらほらと見かける。
肩が重い。別に肩こりとかそういうわけではなく、他者からの他動的な原因で。
「おい、ココ。そろそろ止めてくれない?」
ココは俺の肩にまるで怨霊のようにぴたりと張り付く。ココに張り付かれてもおっぱいが当たるから別にいいかなと思っていたのだが、いくら幽霊であっても重いものは重い。
まぁね、柔らかいおっぱいが当たるからいいんだけどさ、少し重いかな。
いや、ダメだ。全然良くない。そろそろ脱臼しそう。
俺が苦しそうな顔でココの方を向くと、ココは恥ずかしそうにしていた。まるで俺と顔を合わせないように、肩に顔を埋めているのだが、正直言ってそれこそ無茶苦茶重い。
「いや、その、退いてくれませんか?」
俺が再度ココにお願いすると、ココはモジモジとしながら何かを考え込んでいたのだが、他の方をちらっと見て、それを止める。
「そのぉ、離れられないんですよ。私って、守護霊ですけど、一応大まかに『幽霊』の部類なんですよ」
「うん。それは知ってる」
「その、だから……」
彼女はまたちらっと他の方を向く。俺も彼女の向いている方を見ると、そこには一人の男性がいた。その男性の背中には黒い禍々しいモノがコベリついているのである。
あぁ、そういうことね。
「つまりあれだろ?幽霊なのに、幽霊としての職務怠慢だって思われるかもしれないのが嫌なんだろ?」
俺が彼女にそう聞くと、彼女はいつもよりも少し多く縦に頷く。そして、女性専用の武器である上目づかいを駆使してこれでもかというぐらい頼み込む。
「いや、無理だから。重い」
が、あえなく彼女の望みは粉砕されてしまった。
彼女は悔し涙を浮かべながらとぼとぼと俺の横を歩きながら神社へ向かう。すると、夜の街に跳梁跋扈する妖や幽霊などがココをケタケタと嗤う。その嗤い声が冬の冷たい風となり俺の首を触る。
するとココは俯いて何にも言い返せない。俺はそんなココを見てため息を吐くしかなかった。
しょうがないか。そう思わされた時、俺たちの目の前に旋風が巻き起こる。その風は多分、普通の人には見えないであろう風。俺みたいに霊感を持つ人と、彼岸と此岸の間にいる幽霊にしか見えない風。その風の中から声が聞こえた。
「儂の可愛い守護霊を嗤うのは誰じゃ?」
その中から現れたのは神様である。街灯の光を反射する金色の毛の尾をフリフリとさせながら俺たちの目の前に現れた。
神様は涙を浮かべているココを見つけると、ココのところに駆け寄り抱きつく。
「会いたかったぞ。儂の可愛い子よ」
神様はココを抱きしめる。すると、ココはさっきまで泣いていたのに子供のようにすぐに笑顔になった。
神様はココを抱きしめると、嗤っていた妖や幽霊の方を鋭い眼光で睨みつける。
「誰じゃ?儂の守護霊
神様がそう言葉を投げかけると、嗤いの風が一瞬にして止んだ。
すると、神様はまた笑顔になり、俺たちに向かって「さぁ、来い。儂の社へ」と言うのである。
そんな神様を見ていた俺は身震いをした。
おっかねぇ。