終わってしまった冬休み
久しぶりに見た学校の校門。その校門を見ると、出てくるのはため息しかない。
また今日から地獄のような日々が始まる。毎日毎日机と椅子に拘束されて強制的に勉強することを強いられる。ペンを持つ手は動かなくなり、目は黒板から離れて窓に映る青い空を見ることが想像できる。
俺が校門の前に立っていると、他の生徒が愚痴愚痴と冬休みが明けてしまったことを嘆いている。もちろん、俺も声には出してはないものの、心の中では相当嘆いているのだが……。
ああ、何で終わってしまったのだろうか、冬休み。
学校が休みというのは学生の身分にとっては至極恐悦である。学校が楽しい?そんなリア充の言葉など戯言に過ぎない。俺みたいな真のインドアを極める男にとって、家から出ること自体がまず苦痛なのに、さらに学校となると地獄のようである。
いや、もう地獄だろ。
俺が憂鬱な顔をしてまた歩き出した時、後ろから声をかけられた。女子の声である。
「白浜と倉本じゃん」
後ろにいたのは白浜と倉本であった。どうやら、駅でばったりと会ってから、二人で仲良くここまで来たのだろう。まぁ、二人は全然違うキャラだけど、仲は良いし。
俺が白浜の方を見ると、白浜は俺と目を合わせるのを避けるように別の方向を向く。気まずいのであろうか。でも、時が流れるにつれて、そんな思いも風化していくだろうから、俺は今まで通りに接してゆくだけ。そしたら、いつかはちゃんと前みたいに接することができるから。
俺が白浜のことを見てると、倉本は俺にちょっかいを出すように俺の脛をいきなり蹴ろうとした。
が、たったひと蹴りだったので、その攻撃を余裕綽々と交わす事が出来た。すると、倉本は一瞬呆気に取られた様な顔をして、その後俺の方を向いて舌打ちをする。
「……いや、俺、悪いことしたか?」
「何となくだ」
「……」
毎度毎度思うのだけれど、倉本の暴力を振るう基準はどのようになっているのだろうか。俺にはさっぱり分からないが、何やら彼女なりの暴力を振るう基準があるのだろう。
……命の危険を感じる。
俺は背後からの倉本の威圧的な視線を恐々と感じながらも下駄箱まで歩いてゆく。下駄箱に着くと、名前順的に俺と二人は離れている。俺は二人とは離れたところで靴を替えていた。
「おっはよ〜!ゆ〜ずきッ‼︎」
朝から騒々しい男の声がした。誰だか分かっているが、対応するのが面倒くさいので無視する。
「いやいや、無視しないでよ」
北瀬はまるでホモなのではないか見間違えられてしまうくらい俺に馴れ馴れしく触る。「俺とお前の仲だろ?」と言いながら俺と肩を組むのだが、正直言って暑苦しくてウザい。肩を組むのなら女の子の方が断然いい。
何故って?そりゃぁ、横目で女の子のおっぱいを見れるからだろ。
俺は終始北瀬のことを教室まで無視しようとしていたが、履いていた革靴を下駄箱に入れる時、俺の上の下駄箱の人に目が行った。
湯島である。俺は湯島の下駄箱を見てしまうと、彼女の現状を考えてしまい、そこから動けなくなった。
隣にいた北瀬は俺の様子に気づいたようで、彼も少し顔に影みが出たが、その後頑張って笑うような表情を見せた。
「大丈夫。彼女の所には行ってないから」
彼はそう言うと、俺の肩から腕を外して先に教室に向かってしまった。
俺はまた湯島の下駄箱を見る。この下駄箱はいつから開けられていないのだろうか、
北瀬は未だに彼女のことを想い続けている。なんて頑固な奴であろうか。
下駄箱に残った彼女の名札が消えるかもしれない未来が怖い。