安平はウキウキと高揚な気分で大きなリュックサックに手を突っ込み、手探りで書類を漁る。そして、リュックサックの中の大量の書類の中からお目当ての物を見つけたようで、その紙をリュックサックから出して俺に見せた。
それは何かのトーナメント表だった。線には赤く塗り潰されているものもあり、どうやら試合のトーナメント表。紙を見てみると、そこに書いてあるのは……。
「全国高校サッカー!どう?」
安平は嬉しさを前面に出した笑顔で俺を見てくる。いや、別にそれは良いのだが、何となくある事が気になった。
「安平先輩ってサッカー好きなの?」
「いや、別に……」
えっ?じゃぁ、何でそんなはしゃいでるの?
俺が安原の満面の笑みを理解出来ないでいると、赤石が廊下の向こうから歩いてきた。赤石は俺たちを見つけると、駆け寄ってきて先輩である安平に軽く挨拶をする。
そして、彼女は俺を部外者でも見るかのような冷ややかな目で見た。
「知らないのか?」
「……えっ?何が?」
「いや、この学校、今年初めてその大会に出られたんだぞ?」
赤石は俺に当然のことを教えるように言った。が、そんなことを俺はさっぱり知らない。
っていうか、その大会は何?全国大会?
「まぁ、そんな所じゃないのか?私もサッカーのことに関しては詳しくは分からないが、全国の千校以上の中の選ばれた学校だけが出場出来るというものだ」
「千校以上の中から選ばれた学校だけが出場出来る?それにこの学校出られたの?凄くない?」
そんなこと初耳だった。何とその大会は今年の年が明けてからすぐにしたらしく、まだ生まれたての噂。いや、噂じゃなくて真実らしい。
まぁ、俺はサッカーどころかスポーツにあんまり興味ないから、どれほど凄いのかがよく分からない。だけれど、千校以上の中から選ばれたのなら、きっと凄いのだろう。
「ねぇねぇ、そう言えばさ、柚子木くんって、同じ一年の北瀬くんと友達?」
「えっ?あいつですか?友達じゃないですよ」
「いやいや、安平先輩、光牙は北瀬と友達ではなく、親友です」
俺が北瀬と友達ではないと否定したら、赤石は親友だと勝手に決め付けてしまった。俺の了承もなく。
「へぇ、親友なんだぁ〜」
安平は赤石の言うことを納得してしまったようである。赤石の言うことなら信用出来るが、今回ばかりは信用してほしくない。俺はあんなクソ野郎と友達であったら、俺の脳内がドロドロに腐ってしまう。
いや、もう腐ってるんだけど。
すると、何故か安平は目を輝かせた。どうやら、記者魂に火がついてしまったっぽい。何故かは分からないが。
「ねぇ、じゃぁ、親友の柚子木くんにお願いするけどさ、北瀬くんのこと教えてよ!」
「え?何で、あんなやつのことを教えないといけないんですか?新聞のネタにでもするんですか?」
俺は安平に否定されると思いながらも、ふざけて聞いてみた。まぁ、安平が北瀬に気があるのなら、あのクソ野郎は彼女がいるから諦めてくださいって言おうと思っていた。
けど、まさかの返答が来た。
「そうだよ!今度、北瀬くんを新聞の一面に載せるの!サッカー部の英雄ってね!」