一年のGHBの三人で学校の帰り道を歩いていた。二年の五条と神崎は入試の本を読みたいらしく、いつもみたいに二人仲良く図書室に行くらしい。まだ入試の準備をする必要のない俺たちは呑気に話していた。
「もう部長と広路先輩は部室に来ないな」
倉本は二人の顔を思い出そうと空を見ながらそう言った。
「そういえば、そうだな。12月なんて一回ぐらいしか部室に来なかったしな。それに、三学期は三年生は学校に行くの強制的じゃねーし」
俺たちの学校は三年生になると、受験で忙しくなるため、三学期は学校で授業を行わない。かと言って、別に学校に来ないわけではない。学校に来て、受験勉強に励む三年生もいれば、自宅で黙々と机に向かっている人もいる。
門川と広路は学校には来ているようだが、流石に部室までは来ない。部室は二人の気を散乱させてしまう要因が沢山あるし、それにこっちだって気を使ってしまうから正直言って来てほしくない。その方が、両者のためである。
しかし、もう新年入ってから全然顔を合わせていない。気休めぐらいには部室に来てもいいのだが。
「二人はきっと頑張っているんですよ。広路先輩は部長と同じ大学に入りたいがため、頑張って部長に追いつこうと努力しているそうなんです」
「へぇ〜、よく知ってるな。本人が言ってたのか?」
「はい。広路先輩が恥ずかしがりながらもそう言ってました。夢がありますね〜」
白浜は近所の面倒くさいおばさんみたいなことを口にする。いや、まぁ、俺もそう思ってはいるのですが。
で、やっぱり、少し話していたらあの話題が出てきた。
「北瀬くんのことって知ってました?」
ハイ、出たァァ〜‼︎出ましたァ〜、今話題の男、北〜瀬ッ‼︎風の如くいきなり颯爽と女子たちの話題の中心に現れて、「カッコイイ」や「キャー、イケメン!」の言葉を奪って行く男。今やこの学校の男子の敵、それが北瀬。ウザいだけじゃなくて、それでいてモテる‼︎
そう、真にウザい‼︎
で、俺の隣にいる女子二人も北瀬のお話に華を咲かせるのかと思いきや、二人はいきなり北瀬のことを軽くディスり出した。
「なんか、あいつが英雄ってダサくね?」
「まぁ、それ、ちょっと分かります。北瀬くんだからなのでしょうか。なんか、少し幻滅しました」
俺はそんな二人の話を聞いていて、少しだけ嬉しく思った。
いいや、訂正。めっちゃ嬉しかった。
俺は二人に煌びやかな目を見せた。そして、俺は腕を広げ、二人に抱きついた。
「ちょ、ちょっと、なに、何をしているッ!ば、バカッ!さわるな!」
「そ、そんなはずかしいです!あっ、そこ、柚子木くんのエッチ!」
が、俺には二人の誹謗中傷は一切聞こえなかった。俺と同じように北瀬を見ているやつがいるなんて知っただけで、嬉しかった。さっきまでは何となく孤独感に苛まれていたが、仲間がいるとなると安心出来る。
「お前は分かっているじゃないか‼︎そうだ、あいつはチヤホヤされて、どうせニタニタとしている最低野郎だ!」
俺はまた一層強く抱きしめた。俺の腕に当たる柔らかいもののムニッとした気持ちいい感触こそあったものの、その時は下心など微塵もなかった。
「最低野郎なのはお前だ‼︎」
「最低野郎なのは柚子木くんです‼︎」
が、デリケートな二人は許してくれることなく、近距離で双方からビンタを喰らった。
俺のほおには大きな紅葉が二つ出来てしまい、とてつもなくヒリヒリと痛んだ。
「何で、俺、殴られるのぉ……?」
「もう、サイテー!」
「もう、サイテー!」