こんな奴でも青春したいっ‼︎   作:Gヘッド

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化学研究室で

久しぶりに化学研究室にお邪魔する。部屋にはガラスのビーカーや少し汚いバーナー、洗った後なのか濡れている試験管、スタンドなどが机の上に大雑把に置かれていた。窓は開けてあり、外からの風がカーテンを揺らしながら吹いてくる。

 

俺はその光景を見てすぐに窓のところまで歩いた。

 

「冬なんで閉めていいっすか?」

 

無愛想な俺の要求を彼女は笑いながら答えた。いいよ、との返事をもらったので、俺は窓枠を指でかけて横に動かす。外からの風が入らなくなり、カーテンは靡くことなく垂れている。

 

弥生は無造作に机の上の真ん中にあった実験器具をかき分ける。そして、ある程度スペースができたら、そこにコンビニのビニール袋を置いた。俺は弥生の向かいに座り、辺りを見回した。

 

「先輩も受験するんですか?」

 

そう尋ねたくなってしまった。この部屋はもはや蕗見姉妹の自室のようなもので、受験をするのなら受験の本を置いていてもおかしくはないだろう。だが、この部屋には受験関係の本なんて一切置いておらず、理科系の本ばっかりである。

 

俺の質問に蕗見は迷う事なくさらっと返答した。

 

「しないよ」

 

その返答に少しだけ驚かされた。俺の予想と反した答えが蕗見の口から出たことは意外である。一応、この学校の三竦みでもあるし、頭もそこそこ良い方であるのに、何故彼女は受験をしないのかと考えさせられた。

 

俺が理解に苦しんでいると、彼女は言葉を付け加える。

 

「別に大学に行かないってわけじゃないよ。もう、行く大学とかも決まってるし、決定事項なの。ほら、私、大学から直々に推薦があって」

 

「あぁ、化学の分野で何かが評価されたんですか?」

 

「まぁ、そんな感じ」

 

ほう、天才であれば受験など苦労しなくともここまで楽出来るのか。俺も天才になりてぇなぁ。

 

「ちなみに、門川先輩とは違う大学っすか?」

 

俺が痛い所を突くと、弥生は苦し紛れに笑みを浮かべた。もちろん、わざと聞いていることであり、間違えて聞いちゃったとかそんなんじゃない。

 

弥生は表面では笑っているが、多分裏ではめっちゃ困っているだろう。そりゃぁ、二ヶ月ほど前だからと言って、フラれたことを過去の話なんて思えるような人じゃない。どうせ、やっぱりグジグジと考えているのだろう。

 

彼女は俺の予想通り、曖昧な返事しかして来ない。はっきりと違うとは言わずに、遠回しに否定していた。

 

そんな彼女に、またもや単刀直入な質問をしてみる。

 

「やっぱり、まだ門川先輩のこと好きっすか?」

 

「えっ?ま、また、ド直球な質問だね。あはは……」

 

彼女は恥ずかしそうに頭をぽりぽりと掻く。そりゃぁ、盛大にフラれたのに、まだそんな人を好きでいるなんてことはあんまり恥ずかしくて言えないだろう。

 

それでも、彼女はゆっくりと口を開いた。

 

「まぁ、しょうがないよ。あれは初恋だし……」

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